第十二話 孤独の者その六
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「だが先はわからない」
「万が一、ですね」
「敵対することになれば」
「その時は」
「そうならない様にするか、ましてや共通の敵がいる」
王国のこととだ、太子は常にこの国のことも頭に入れていてそのうえでこの国の政治も見ているのである。帝国の太子として。
「それならな」
「余計にですね」
「敵対してはいけないですね」
「友好関係は保っておくべきですね」
「盟友として」
「王国は強い」
帝国から見てもだ。
「異教徒とまで結ぶしな」
「そして帝国を脅かしもしますし」
「油断のならない相手ですね」
「だからこそですね」
「王国に対するにはですね」
「この国とも結んでいないといけない」
「絶対にですね」
「だからだ、衝突したくはないが」
それでもというのだ。
「強大な海軍を持ち得ることは意識しておこう」
「そのことはですね」
「常に頭の中に入れておき」
「そしてですね」
「この国のことを考えておきますか」
「この国が貿易が出来る様になり得てそして豊かにもなり得るのなら」
それならばというのだ。
「我が家のものとしなければな」
「では」
「お子をですね」
「もうけられますか」
「何としてもそうしよう、私も務めを果たす」
またこう言った太子だった。
「妃と今宵もだ」
「では」
「その様に」
「務めは果たす」
必ず、という言葉だった。
「ロートリンゲン家、帝国の為にな」
「そうされて下さい」
「是非」
その太子にだ、側近達は口々に話してだった。そのうえで。
太子はオズバルト公と会談の場を持った、深夜に二人だけで会った。そこでだ。
太子はまずはオズバルト公の話を聞いた、そのうえで。
あえて慎重な態度を装ってだ、彼に問い返した。
「この国の為ですか」
「そうです」
オズバルト公は太子にも強い光の目で答えた、そこには一点の淀みも臆したところもない。そうした目だった。
「マイラ様の御為、そして」
「旧教の為にも」
「そうです」
「そしてですね」
あえてだ、太子はこの言葉を出した。これは駆け引きでそうした。
「貴方達の為に」
「否定はしません」
オズバルト公は正面から今の言葉を受けてはっきりと返した。
「それも、いえ」
「このこともですね」
「願いの中に入っています」
包み隠さず言った、今はそうすべきだと思い。
「このままではです」
「この国の旧教徒はですね」
「貴族も平民もです」
その誰もがというのだ。
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