暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第149話 告白。あるいは告解
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てくれるのは分かっていた。何故か深い湖を連想させる、透明な瞳で俺を見つめながら、呟くようにそう言う有希。
 ただ……でも?

 イマイチ、彼女の意図が理解出来ずに、訝しげな雰囲気を発して仕舞う俺。確かに、彼女の事を何から何まで理解出来ている訳ではないが、それでも、普段の彼女は合理的で、的確な判断を有し、行動に関しても躊躇のような物を感じさせない……のだが……。
 今の彼女は何かを決意しては、しかし、直ぐに躊躇をする。そんな気配の繰り返し。

「……でも、わたしには何故か、人間と同じ生殖能力が初めから付与されていた」

 俺の発して居る気配を察しているはずの彼女。しかし、それでもそれまでと同じ淡々とした口調を変える事なく、言葉を続けた。
 その……普通に考えるのならかなり意外な内容。しかし、彼女の背景を知っていたのなら、別に驚く必要のない至極真っ当な内容を。

「以前は、何故、わたしにこのような能力が付与されているのか――」
「いや、それ以上言う必要はない」

 尚も言葉を続けようとする彼女を制する俺。もっとも、それは俺からすると当然の行為。何故なら、これ以上、彼女の告白を聞いたとしても意味がない……ドコロか、気分が悪くなる一方だから。

 確かに、彼女に人間と同じ生殖能力が有っても不思議ではない。但し、その理由に関して言うのなら……。
 例えば、人工的に造り出された生命体に心が宿るのか。その実験の果てに必要だからその機能を持たせた可能性は否定出来ない。
 何故ならば、彼女たちの正式な呼称は対有機生命体接触用人型端末(たいゆうきせいめいたいコンタクトようヒューマノイド・インターフェイス)。そのコンタクトにより人間と同じような心を獲得、その果てに恋や恋愛感情から、更に深い接触に至り……。
 その結果、人ではない存在から、人が産まれる可能性を追求した。
 人の心を得、その後、母性を得る可能性を実験するのなら、人間と同じ生殖機能が彼女にはなければならない。
 この仮説を裏付ける情報は、情報統合思念体の造り出した人型端末には、何故か女性型しか確認されていない、と言う事が挙げられる。

 その可能性が有るにはある。人ではない存在に魂が宿るのか。その魂は人を愛す事が出来るのか。
 そして、その愛の結晶……子供を愛し育てる事が出来るのか。
 かなり高尚な探究だとは思う。……表向きは。

 しかし……。
 しかし、情報統合思念体と言う連中の行動が、その可能性……神に成り代わり、自らの手で新たな可能性を創り上げる、と言うプロジェクトの一環である可能性を限りなく低くしている、と思う。

 敢えて言う。そんな当たり前の事を知らない『情報を集める事に因り進化し続け、その結果、進化の閉塞状況にまで追い込まれた高位情報生命体』
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