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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第149話 告白。あるいは告解
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えを聞いた有希が小さく首肯く。自らの希望を一蹴されたにしては妙に落ち着いた雰囲気。
 そう、まるで俺の答えを聞く前から、どう言う答えが返って来るのかが分かって居たかのような……。

「わたしには人間と同じように成長して行く機能は存在していない」

 この世界に呼び出された瞬間から今まで、まったく同じ姿形を維持し続けている。
 何か強い覚悟のような気配を発しながら、意味不明の内容を話し始める有希。
 ただ、成るほどね。確かに本音を言わせて貰うのならば、彼女の成長した姿を見てみたいとも思うのだが、それが出来ない……と言うのなら、それはそれで仕方がない。

「まぁ、共に成長して行く事が出来ないのは、有希の方から考えると少し残念な事なのかも知れないけど、俺の方から見ると一概に悪い点ばかりと言う訳でもないぞ」

 例えば出会った頃の姿をずっと維持し続けると言うのは、むしろ良い点だと思うから。
 成長=同じ時間を過ごして行く、……と考えるから悪い面ばかりが強調されるだけ。出会った頃の新鮮な気持ちを忘れないと言う面から見たのなら、見た目が変わらないのはむしろ利点となるはず。

 有希が何を考えて、今、この場所でこのような事を言い出したのか、その理由は定かではない。……が、それでも、確かに彼女の未来の姿を想像する事が今までにも何度かあったのは確かな事なので、その時の感情が彼女に流れて行き、その結果、彼女を少なからず傷付けていた可能性はある。
 もっとも、見た目年齢が成長をすると言う点で言うのなら、龍種や仙人だって人工生命体の有希と大して違いがある訳ではない。人化した龍の寿命がどの程度なのかはっきりとした資料がある訳ではないが、仙人の寿命はおおよその見当は付く。
 少なくとも一万年や二万年と言う単位でない事は間違いない。
 有名な言葉で「人間五十年。下天の内と比ぶれば……」と言う物があるが、これは天界の内で、現世(人間界)に割と近い世界である下天でも、一日が人間の世界では五十年と言う単位となる。その長大な時間に比べると人間の一生などとても儚くて短い……と言う意味の言葉。

 ……東洋の伝説で語られる天界や仙界。分かり易く言えば、この地球世界の割と近くに存在している異世界で俺が暮らしていた頃の平均寿命は四千歳。但し、その世界の一昼夜を苦界(地球世界)の時間で計算すると、確か四百年を一日としたはずなので、その天界の一般的な人間の平均寿命を苦界の時間で表すのなら三百万歳以上、と言う事になる。
 そもそも仙人に取って寿命など有って無きが如しもの。見た目=現在の年齢である事など稀であり、更に言うと、善行を積み重ねれば積み重ねるほど。悪行を積み重ねれば積み重ねるほど、その寿命は果てしなく延びて行く。

「……でも」

 あなたがそう言っ
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