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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第149話 告白。あるいは告解
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かに俺を見つめ続ける。

 ……成るほど。そう言えば、未だ彼女の願いに対する明確な答えを返してなかったか。
 ならば――

「もう気付いているだろうけど……」

 その真摯な瞳。そして、何処までも透明な気配の彼女に対して、そう前置きをする俺。ただ、其処に微かな違和感。
 果たして頭の良い彼女が、これから行う俺の答えを想定していない……などと言う事があるのだろうか、……と言う疑問。

「有希をハルケギニアに連れて行く事は出来ない」

 相変わらず迂遠(うえん)な、とか、遠回しに、とか言う言葉とは無縁の答え方。
 確かに持ち物――。例えば服や装飾品などが問題なく召喚された後も身に付けていられる以上、ハルケギニア側からの召喚円が開く際に、彼女の手を握った状態で、その召喚円に踏み込めば原理上は有希を連れた状態で向こうの世界へと行く事が出来るでしょう。
 ただ――
 ただ、この世界の絶対の決まり。ひとつの世界に存在出来る同じ魂はひとつだけ。この決まりがある以上、長門有希の未来の存在である可能性の高い、湖の乙女が居るハルケギニア世界に彼女を連れて行く事は出来ない。
 確かに、これは俺の推測でしかない。それに、既に歴史の流れが大きく書き換えられて居て、ここに居る長門有希と、ハルケギニア世界の湖の乙女との間に魂の同一性は失われ、似た魂の形を持つ他人と化している可能性はある。
 しかし……。
 しかし、その可能性があるからと言って、安易に試して良いような事柄でもない。
 安易に試して良い相手ではない。

 それは、無理矢理に同じ魂がひとつの世界に留め置こうとすると何が起きるか分からないから。

 単に同時に存在出来ない事により、召喚失敗となるのなら問題ない。これなら誰も傷付かないから。誰にも迷惑を掛ける事がないから。
 しかし、俺が知っている限りで前例がない以上、ありとあらゆる可能性を想定して置く必要がある。有希と湖の乙女が融合して、双方の記憶を持った新たな人格が誕生する可能性がある。また、魂は同じ。しかし、ふたつの異なる肉体が重なり合う事が出来ず、其処に致命的なズレが生じて世界誕生の際に発生した規模の爆発が発生する可能性もある。
 もしかすると、ふたつ世界の異なる……。しかし、同じ魂を持つ存在が融合する事により、本来は異なっているはずの世界自体に親和性が生まれ、更にふたつの世界が接近。その挙句に次々と同じような融合が進み、結果、ハルケギニアとこの地球世界とが完全に融合したまったく別の……。しかし、かなり歪な世界が誕生して仕舞う可能性すら存在していると思う。

 這い寄る混沌などに取っては、そのような世界が混乱して行く様は正に願ったり叶ったりの状況なのでしょうが、その状況の元を俺が作り出すのは流石に……。

 俺の答
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