第6章 流されて異界
第149話 告白。あるいは告解
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
せる俺。
「いや、その程度の事で別に謝る必要はない」
俺の気分から言うと、彼女は少し生真面目すぎる……と感じている。そう言う事。
俺の答えを予測して居たのか、この言葉に驚く訳でもなければ、彼女の告解を遮った事に対して不満を発する訳でもなく、ただ、静かに俺を見つめる有希。
但し、有希が後悔している。……俺をこの世界に無理に留め置いた事を後悔しているように、俺も臍を噛むような思いに苛まれつつあったのも確かなのですが。
何故ならば、
「アラハバキを封じた際にオマエさんが発した誓いの言葉を正確に履行するのなら、今回の有希の行為は何も間違ってはいないと思うぞ」
先ず、奴ら……這い寄る混沌や名づけざられし者が本当に俺を殺す心算があったか、それともそうではなかったのかについては判断を保留するにしても、奴らが俺の死を予告したのなら、俺を護ると宣言した彼女が、俺を護る為に危険な世界から召喚するのは別に問題がある訳ではない。
更に、その世界に帰る事=更なる危険が待ち受けている可能性が高いのなら、俺が帰る事を阻止しようとする事も別に不自然な行為ではないでしょう。
大体、有希に召喚された時の俺の状態。右腕と両足は存在せず、身体中は大小様々な傷からの出血で真っ赤。普通の人間ならば確実に失血死しているであろう、……と言う状態。こんな状態の人間を、怪我が治ったからと言ってあっさり死地に送り返せるような人間の方がどうかしている。
おそらく俺が彼女の立場なら、それでも帰るなどと言う相手には、どうしても帰りたいのなら俺を倒してから行け、……ぐらいの事は言うと思う。それぐらい無茶で無謀。自分の実力が理解出来ていない命知らずの馬鹿だ、と考えるから。
「そう言う訳で、有希が俺に対する再召喚を阻んで居た事は最初から分かっていて、それでも尚、その事に対して今まで何も言わなかったと言う事は、俺自身がそれを容認していたと言う事」
故に、有希が謝る必要など皆無。
……そう言ってやる俺。但し、その言葉の中に微かな嘘が混じる。
それは「最初から分かっていた」……と言う部分。実は、有希が俺の再召喚を阻んで居た事が最初から分かっていた訳ではない。
ただこの部分に関して言うのなら、ハルケギニアの長門有希が自らの事を「湖の乙女」だと名乗った事について深く考えていれば、この辺りの事情に付いては直ぐに分かったはず。単に俺のオツムの出来が悪かっただけ。
そう、本来ならば……彼女の立ち位置から言うと、銀腕のヌアザの神妃ネヴァンと名乗る方が近いはず。更にその方が神話的に言うと、牛種に取って都合の良い結末を迎え易いはずなのに、彼女が名乗ったのはアーサー王の物語に登場する湖の乙女ヴィヴィアン。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ