第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#13
DARK BLUE MOONX 〜Dead Man's Anthology〜
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て致命的なミスに気がついた。
“シャナがいない”
そう、仮に目の前の徒が封絶を発動させ外界に影響を及ぼさない
因果孤立空間を創り出したとしても、その空間を 『修復』 する能力は自分にはない。
戦闘となれば相手もただではやられないだろう、
故に幾らこの徒を斃したとしてもそれでは何の意味もない。
「テメェ……! 小賢しい真似を……!」
「だが有効だ。コレで君は、私に手が出せない」
口中で歯を軋らせる無頼の貴公子とは対照的に、穏和な表情で彼と対峙する老紳士。
確かに、その通り。
コレでは周囲の人間全員を人質に取られたも同然だ。
あのやかましいクソガキがいないだけで、
こうも簡単に自分が追いつめられるとは。
完全に手詰まりとなり、承太郎は冷たい汗に塗れた拳を握る。
このままでは、捕らえられるも殺されるもこの男の意のままだ。
(“スター・フィンガー” で、一瞬の内に首でも斬り飛ばすしかねぇ……ッ!
だが、果たしてソレで死ぬか……!?
イヤ、それ以前に命中たるのか……!?)
瀬戸際の緊張感の中、承太郎は己の思考回路をフル稼働させ打開策を模索する。
しかし眼前の老紳士はあくまで穏和な表情のまま承太郎のライトグリーンの瞳をみつめ、
そして予想外のコトを口走った。
「フム。少し悪ふざけが過ぎた、か。
そう構えるな。私は君と争う気はない」
(!?)
交戦の意志はないというコトを証明するように、
尖った容貌が笑みの形に折り曲がる。
「それより、ミステスとは言ったが、どうもソレとは違うようだな?」
そう言って老紳士は興味深そうに承太郎を観察する。
訝しげに眼を細める承太郎に、老紳士は更に予想外のコトを告げた。
「どうだ? 茶でも飲まないか? 君に色々と聞きたい事もある」
【2】
美術館最上階に位置する飲食街。
入った店はカフェというよりソレを兼用したレストランに近いらしく
周囲に料理の匂いが漂っている。
その店の一角、外の風景を一望出来る窓際にて、
大形に脚を組む無頼の貴公子と風雅な佇まいの老紳士が
テーブルを挟んで向かい合わせに座っていた。
右脇の強化ガラス越しに、香港の街が夕陽に照らされて鮮やかに煌めき、
その先の海原も金色に輝いている。
夕暮れ時なので店内の人気は少なくなかったが、
燻した木材で構成された空間独特の色彩により
落ち着いた雰囲気を周囲に生み出している。
案内された席に着くやいなや、煙草のパッケージを取りだし火を点けた承太郎に対し、
真向かいの老紳士の眉が微かに動いた。
やがて注文を取りにやってきた上品な制服姿のウェイトレスに
承太郎は開いて目の前に放置していたメニューの写真を指差し、
「水割り
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