第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#13
DARK BLUE MOONX 〜Dead Man's Anthology〜
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、
それが触れるか触れないかの間に、彼女の存在は消え去っていた。
何の痕跡も、余韻すらも遺さず、老婦人の胸元で揺らめいていた光のみが、
男の手の中に握られていた。
彼女の脇にいた男性は、自分が何故こんな位置に手をあげているのかと
不思議そうな表情でその場を去る。
後には、老婦人の存在の灯火を手にしたスーツ姿の男だけがそこに残った。
「――ッッ!!」
全身の血が煮え滾るほどの怒りが、承太郎の裡で激しく渦巻いた。
総身から放つ威圧感のみで、
周囲の壮麗なるグラスアートが片っ端から砕け散ってしまうかのように。
口元を軋らせ足下に敷かれた絨毯を踏み躙るようにして近づく
その尋常ならざる気配に、男の方も気づいたのかトーチを手にしたまま振り返る。
クラシックスーツを纏った、針のような痩身。
左手に鈍い光沢の在るステッキを持ち黒い天然素材の帽子を被っている。
厳かな気品に充ち充ちたその姿は、さながら老紳士といった佇まいだが
今の承太郎にそんなコトは目に入らない。
老齢にしては長身であるその男を見下ろすようにして
承太郎はその老紳士、否、紅世の徒に向けて口を開いた。
「テメェ……ッ!」
そのたったの一言だけで、即座に足下へ跪き訳も分からず命乞いをしかねない恫喝。
しかしその老紳士は落ち着いた表情のまま、趣のある枯れた声で告げる。
「ほう、“視える” のか? ただ者ではないな」
「やかましいッ! とっとと表でろ! クソジジイッッ!!」
穏やかなクラシックの流れる閑静な空間に、無頼の貴公子の怒号が響き渡った。
周囲の人間が何事かという視線を己を見るが、無論そんな事は気にならない。
「ふむ、なるほど、“ミステス” ……『そういうコトか……』
しかし、出来るかな?」
「ッ!」
少しだけ険難な色を帯び、自分に告げられた老人の言葉。
当然ソレを宣戦布告と判断した承太郎は、来るべき 『能力』 の発動に身構える。
戦闘の主 導 権を一時相手に与えるコトになるが、
そんなものは発する光に眼をやられなければどうというコトはない。
(来や……がれ……ッ!)
すぐさまにでもスタンド 『星 の 白 金』 を発現出来る
精神態勢を整え、承太郎は目の前のまるで霧のような存在感の徒を睨め付ける。
しかし。
彼の全身で研ぎ澄まされる闘志とソレに附随して湧きあがる
スタンドパワーとは裏腹に、目の前の徒は 『何もしてこない』
虚を突かれたように顔を引く美貌の青年に対し、
静かに告げられる老紳士の言葉。
「仮に私が封絶をこの場で発動させた所で、結果は同じではないかな?」
「!!」
その言葉に、承太郎はあまりにも初歩的な、そし
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