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恋姫†袁紹♂伝
第45話
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はまるで敵を焼く煉獄の炎かの如く、敵軍を追いつめる。








「大炎の炎から逃れる術は一つ、そろそろよ」

「――これは!?」

「そう、陣を崩してバラバラに散る事。これ以外には無いわ」

「その散っていく敵兵の様が、まるで花開いていくことから……」

「大炎開花。美しく残酷な、大炎が咲かせる戦場の華よ」

「……」

 華、などいう生易しいものではない。確かに周囲に散ることで被害は止まったが。
 半狂乱になりながら敵兵が逃げ出していく光景は、さながら、大火事に巻き込まれた女子供だ。
 陣は解け、隊は乱れ、もはや士気がどうこうの話ではない。
 正規軍にも関わらず、一人、また一人と武器を投げ逃げ出したのだ。
 隊を纏める者がそれを止めようと奮起するが、それが同士討ちにまで発展した。

「!?」

 そんな中、星は大炎を見て目を見開く。
 
 狙い通り敵兵が散ったのを確認した彼等は、音々音を中心に再び魚鱗の陣を築いていた。
 狙いは勿論。陣を崩し、直属の部隊しか連れていない敵総大将である。

 それを察知した敵将が白旗を掲げたことにより、今回の戦は大勝利に終わった。








 戦は終わり、自分の手勢が戦後処理に動いているのを見下ろしながら、星は感慨深そうに呟く。 
 
「何とも、凄いものを目撃したな……」

 嘘偽りの無い感想だ。初めは物見遊山だった彼女も、今はすっかり将の顔をしている。
 星は頭の中で、仮に自分とその隊にあの“大炎開花”が使われた場合、対処できるか模索していた。

「……」

 無理だ。一度内に入られたら最後。先程の敵軍のような結末を迎える。
 対策としては大炎の騎突をどうにか封じて、内に入られないようにするくらいしか……。
 最悪、散った後に体勢を即座に立て直せるようにすれば――

 星がいつになく難しい顔で思案に暮れていると。
 桂花が悪戯な笑みを浮かべながら、とてつもない爆弾を落とした。

「“大炎開花”には、今回見せていない先があるわよ」

「―――ッ」

 何度目かわからない驚愕。その表情を見て桂花が満足そうに笑う。
 普段してやられているのだ、このくらいの報いは可愛いものだろう。
 先があるというのも嘘ではないし。

 




 少しして、二人の立場が逆転しかけていたその高台に本国から報せが届いた。
 内容は魏国が袁陽に宣戦布告したというもの。それは新たな戦いの幕開けであった。











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