第45話
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能力は確かだ。
問題なのは星の隠密能力である。
かつて黄巾と対峙し、三姉妹を救うため単身潜入行動をとっていた星。
彼女はその時、本業の隠密を見たと公言しており、それで気配を消すコツを掴んだらしい。
桂花からしてみれば傍迷惑な話である。
将である星は基本的に戦地で単独行動をしない。それでなくとも彼女は正面から堂々と戦うことを好む。
斥候は兎も角、要人暗殺といった裏仕事は夢のまた夢だろう。
故に、その高い隠密能力は悪戯か、華蝶仮面として警邏から逃げ回る時にしか使われていなかった。宝の持ち腐れもいいところである。
「持ち場を離れるなんて、感心できないわね趙雲将軍?」
「おっと手厳しい。しかし問題はありませぬ、我が隊は優秀な者が多いのでな」
あっけらかんと言ってのける星に、桂花は再度溜息を洩らす。
彼女の言葉通り、趙雲隊は袁陽でも一二を争う精鋭部隊だ。
攻に傾倒している部隊が多いだけに、攻守共に臨機応変に動ける趙雲隊は稀有な存在である。
兵達は将である星の性質を色濃く継いでおり、普段だらけているぶん本番で必ず仕事をこなす。
仮に星が離れたとしても、副将が上手くまとめているだろう。その優秀さを疑ったことは無い。
だからこそ、軍の模範として規律を重んじてもらいたいのだが……。
「む、私の顔に何か?」
どこからか取り出したメンマを食している星を見て、桂花は再三溜息を洩らす。
結果を出しているだけに強く出れない。非常にもどかしい話だ。
「それにしても楽しみですなぁ、大炎専用戦術“大炎開花”」
メンマで頬を綻ばせた星が、話題を変えるように口にする。
此処に足を運んだのは見物するのが目的だ。桂花への悪戯はついでである。
今回の新戦術“大炎開花”は殆どの武官達には伝わっていない。
概要を知るのは袁紹と軍師達だけである。賈駆は新参であるため席を外そうとしたが、袁紹の好意により知ることを許された。
「秘匿としたのは流出を防ぐためですかな?」
「そうよ。この戦術は強力だけど、その分対策しやすいわ。でも、一度嵌れば――」
「嵌れば?」
「……殆どの軍は成す術も無いわね」
「それほどに……!」
星は反射的に戦場へと目を向けた。これから繰り広げられるのは、音々音が心血を注いで編み出した大戦術である。
反董卓連合軍。あの戦で音々音は苦い敗北を経験した。
南皮に帰還し、改めて報告をした彼女を待っていたのは労いの言葉だった。
それもそのはず。結果的には賈駆との心理戦に敗北した音々音だが、その行動は最善だったのだ。
人馬を吹き飛ばし、矢も刃も弾き返す重騎隊。そんな規格外の騎馬に突進してくる一台の馬車。
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