第45話
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魏国を蝗害が襲い、解決してから約半年の時が流れた。
陽と魏の建国により浮き足立っていた諸侯は、未曾有の乱世へと身を投じた。
ある者達は領地拡大の為、ある者達は自国を守る為、各自が掲げる義の為に戦いに明け暮れた。
そして、今も――
「進め進めぇッッ! 踏みしだけぇッッッ!!」
『オオオオオォォォォォ――――ッッッッッ』
次の戦地へと向かう大軍が吼える。奇襲に近い形で幾つもの砦を落として来た為に士気も高い。
しかし、彼らの今までの戦いはあくまで前哨戦であり、本番は次にあった。
「陽国など恐るるに足らず、我等の武勇を刻み付けるぞ!」
彼等の次戦の相手は、あろう事か大陸最大勢力を誇る袁陽である。
兵力は約一万。大国を相手獲るには心もとない数字だ。
だが問題は無かった。彼等はまともに戦う気など無かったのだから――……。
陽の建国。これに反感を持った者は少なくない。
いくら王朝の権威が失墜しているとはいえ、諸侯はその臣下である。
袁紹が漢王朝に見切りをつけ建国した時、彼の勢力を疎ましく思っていた者達はそれを批判した。
民を虐げ続け、漢王朝の寿命を下げた一員でありながら厚顔無恥にも、袁紹を“不義理”と非難したのである。
そんな中、反袁陽筆頭とされる男の一人が戦を仕掛けた。
彼の狙いは袁陽を倒す“力”を手に入れること、その為の進軍だ。
いくら陽国を非難し、陰口を叩こうとも、かの国が大国である事は変わりない。
戦いを仕掛けることは余りにも無謀であり、徒党を組むことすら出来ず尻込みしていた。
皆が恐れているのは袁陽の“多数精鋭”とまで呼ばれる兵士である。だからこそ男は戦を仕掛けた。
少数精鋭こそ兵の常、多数で精鋭など幻想である。それを証明できれば他の者達も重い尻を上げるはずだ。
そうなった時は自分が反袁陽連合を率いる。かの大国を滅ぼし、史に名を刻むのだ!
「物見より報告、この先に袁陽軍の姿を確認!」
「待ちわびたぞ、くくく……! して、兵力は如何程だ?」
三万? 五万? 男の口角がつり上がる。
何も考えなしに戦を仕掛けたわけではない。単純だか必勝の策が彼にはあった。
それは―――緒戦で全力を出し尽くす事。
相手は大軍だ、ならば余力を残しながら戦うはず。それに対して自分達は緒戦だけ考えればいい。
大局での勝利など考えていない、緒戦の一勝だけ獲ればいいのだ。
後は兵力差を言い訳に撤退。自軍が緒戦を制した事を流布すれば、多数精鋭など幻想であったとして、各地で燻っていた諸侯が立ち上がるだろう。
しかし―――耳を疑うような報告が男を待っていた。
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