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101番目の舶ィ語
第十九話。螺旋
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じている。
これが『不可能を可能にする男(エネイブル)』の『対抗神話』。

『そして、男性は理解しました。自分には不可能な事なんか、出来ないことなんて何もないと。どんな無理難題でも必ず可能に出来るのだ、と』

「うぐっ……ぐあああぁぁぁ??」

頭の中が真っ白になった。

『だから男性は行動しました。不可能をなくすことで皆が幸せになれるように。だから男性は戦いました。不可能な状況をひっくり返して、誰も死なないように。だから男性は訴えました。自分ならどんな状況になろうとも、必ずより良い未来へと導くことができるのだ、と______』

「うがぁぁぁああああ??」

もう止めてくれ。もう語らないでくれ!
今すぐ、その口を閉じてくれー!
そう俺が思ったその時。
俺の体をギュッと、温かいものが包み込んだ。
柔らかい感触、そして甘い匂い。それらを感じた俺は落ち着きを取り戻す。
と、同時に体の芯に向かって血が強く流れていくのが解る。
ああ、これはアウトだ。血流は止まらない、止められない。
だが、そのおかげで冷静さを取り戻せた。
そして、俺を抱き抱えたまま、ぐーんと空高く上昇していった。
この高さなら理亜の『夜話』は届かない。
チラッと背後を振り返ると、音央が俺の体にしがみついていた。

「ぐっ、馬鹿音央! 離れていろって……」

「バカはあんたでしょう! さっき言ったこと、もう忘れたの?
あんただけを苦しませない、あんただけを戦わせない。私も戦える!
そう言ったの、聞いてたでしょ!」

音央が声を張り上げて主張した。
確かに言っていたが、俺は音央に戦ってほしくない。それは音央を信用していないから、というわけではなく、ただ単に危ない目に遭わせたくないからだ。音央はロアとはいえ、長い間普通の人間として暮らしてきた一般人。『妖精の神隠し』という存在が発覚したが、それがなんだ! 普通の生活を送って、普通に生きる。そんな『普通』の暮らしを送っていい存在なんだ。
だから俺は彼女の提案を受けない気でいた。

「確かに言っていたけど、音央はロアとの戦いに慣れてないだろう? それに理亜との戦いで受けたダメージが残ってるはずだ。あとで音央にはやってもらいたいことがあるから今は体を休めることに集中していてくれ……」

「でも! 私も何かしたいの! もう、誰かに任せっきりなのは嫌なの! あたしだって、戦える。あたしだって……誰かの役に立ちたい。お願いだから、一人で抱え込まないで……」

一人で抱え込むな、か。
まさかそれを音央に指摘されるなんてな。人一倍気が強くて、誰よりも責任を感じやすくて、考えるより行動してしまう……そんな音央に諭されるなんてな。

「……悪いな、音央。そして、ありがとうな。君の
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