第二十二話 心と身体その五
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「前と違います」
「女の子の手になってきているのね」
「男の子の手じゃないです」
「そうなのね」
「前はもっとごつごつしていたと思います」
「手だけじゃなくてね」
「身体の他の部分も。心も仕草も」
優花自身も言った、自然とそうなった。
「変わってきているんですね」
「そうよ、全部一緒にね」
「どれか一つじゃなくて」
「絡み合ってなのよ」
まるで三本の蔦がそうなっている様に。
「蓮見君は徐々に女の子になっていってね」
「それでなんですね」
「男の子を好きになっていくかも知れないわ」
「今はそうじゃなくても」
「そうなるかもね」
女の子を好きなまま、つまり同性愛になるかも知れないがというのだ。看護士はこの辺りの可能性はどちらも否定していなかった。
「けれどどちらになってもね」
「男の子を好きになっても女の子が好きなままでも」
「いい恋をしなさいね」
「いい恋をですか」
「そう、幸せなね」
「いい人と、ですか」
「そうよ、いい人と幸せに楽しめるね」
そうした恋をというのだ。
「しなさいね」
「そうですね、変な人と悪い恋愛をしたら」
「傷付くのは自分だから」
「だからですね」
「失恋もあるわ、けれどね」
看護士は遠い目になってもいた、そこに彼女だけが見えるものを見てそのうえで優花に対して語っていた。
「いい恋愛はずっとその人の財産になるのよ」
「心の、ですね」
「ええ、悪い恋愛は傷になるわ」
財産とは別にというのだ。
「そうなるわ」
「全然違うんですね」
「告白を友達にけしかけられても」
それでもというのだった。
「よく考えるべきだし」
「それで告白しても振られたりですね」
「その後でその友達が手の平を返して逃げることもあるわ」
「自分達が危なくなってですね」
「人ってわからないもので振って振られて終わりじゃないのよ」
そこで話が終われば人間の世界はどれだけ簡単なものであろうか、しかしそうはならないのが人の世なのだ。
「その娘の周りの娘が騒いだりしてね」
「色々と動いたりして」
「そう、告白した子やその子の周りを攻撃するから」
「おかしな方向にいって」
「けしかけた当人達が逃げて逆に攻撃したりするから」
「嫌な話ですね」
「これは最悪の恋愛よ」
恋愛の中でもというのだ。
「確実に傷になるわ」
「その人の心に」
「恋愛は怖いものでもあるのよ」
これ以上はない甘美なものであると共にだ。
「そうしたものでもあるから」
「だからですね」
「いい恋愛をしてね」
「そうあるべきですか」
「心の傷は簡単には消えないから」
「よく言われていますけれど」
「実際によ、しかもその傷に触れられ続けると」
その傷がというのだ。
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