114部分:第十四話 死者の顔その一
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第十四話 死者の顔その一
第十四話 死者の顔
「それではだ」
「はい」
トラキアにあるアーレスの宮殿。そこの奥深くでカナンはエリスに対して述べていた。彼は他の八大公達の先に片膝をついて座りそのうえで彼の前に立つエリスに対して述べているのであった。後ろの八大公達はただ頭を垂れそこに控えているだけである。
「我等は九人の狂闘士達を失ったのだな」
「申し訳ありません」
こう述べて詫びるカナンであった。
「全ては私の責任です」
「いや、よい」
しかしここでのエリスの言葉は意外なものであった。
「それはいい。構わぬ」
「同志達の犠牲は構わないと」
「そうだ。彼等は死んだのではない」
「死んだのではない」
「わかっている筈だ、カナンよ」
その炎を思わせる目でカナンに言ってきた。
「我等狂闘士のことはな」
「無論です」
「ならば何も思うことはない」
また言うエリスであった。
「このことにはな」
「有り難き御言葉」
「そしてだ」
カナンに対して言い終えるとここで話を変えるエリスであった。
「皆の者」
「はい」
八大公は全員でエリスの言葉に応えた。
「まずはドイツでの戦いは終わりました」
「ではエリス様」
「次は」
「アメリカです」
次の場所を指定するエリスだった。
「そしてそこに向かうのは」
「誰か」
「私か?それとも」
「私なのか」
八大公達は急に色めき立った。既に顔を上げている。そのうえでお互いの顔を見合う。エリスはその彼等を見て女神らしい厳かな声で告げるのだった。
「ベール」
「はっ」
ベールのジークがエリスの言葉に応える。
「次は貴方です」
「わかりました。それでは」
「今回も向かうのは貴方と九人の狂闘士です」
「わかりました。それでは」
ジークはエリスの言葉を慎んだ様子で受けている。
「是非共。お任せ下さい」
「向こうも間違いなく黄金聖闘士を出して来る筈」
「相手にとって不足はありません」
何でもないといったようなジークの返事だった。
「誰であろうが。ただ」
「ただ?何ですか」
「相手は望みたいものです」
これがジークの望みであるようだ。
「このジークとしましては」
「誰なのですか、それは」
「カプリコーン」
静かな言葉だった。
「あの男こそを」
「そうですか。カプリコーンをですか」
「確かカプリコーンはその手に剣を持つ聖闘士」
ジークが言うのはそのことだった。
「ならば。このジークの相手にこそ相応しいです」
「では。そうなることを私からも祈りましょう」
エリスはジークの戦意を見て満足そうに微笑んでいる。
「より激しい戦いの為にも」
「有り難き御言葉」
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