第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
14話 咎人問答
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知れない。
暗闇に鎖された彼からすれば、こうして誰かと触れ合って日々を過ごせる俺のなんと救われていることか。
それでも、俺だって何も苦難を経ずに今日まで至ったわけではない。
キレイなままで生きてきたつもりはない。
血に汚れて、壊れて、それでも《人間》のフリをしてここまで食い縛って来た。
その様子を見ていない彼には、その問いも道理というもの。
大切な誰かの為に、多くの命を奪った《我執》があるからこそ、俺の返答は決まっていた。
「ああ………、仲間の為なら、俺は誰だって、際限なく殺して見せる。アンタが望むなら、妻の仇をついでに取ってやってもいい」
僅かに時間を置いての返答には、感情の波が全く乗らなかった。
ブラフを織り交ぜたとはいえ、どこまでもどこまでも我執を突き詰めた一言は、グリムロックにさえ沈黙を齎す。
三秒、七秒、過ぎていく時の何れかを計ったように声が絞り出された。
「羨ましいな。だが、極めて危うい」
「承知の上だ」
更に数秒、間を空けた末にグリムロックが問いを向けてくる。
「………誰かの命を奪うという行為に、君は恐怖を抱かないのかい?」
「怖いね。HPが無くなればお互い死ぬ、俺だって殺されるかも知れない。怖くないわけがないだろう」
「では、どうして君は戦えるんだ? 誰かを死なせたくなければ、一緒に圏内に居ればそれで済むじゃないか。無用なリスクを冒して、途方もない困難に立ち向かうより、大切な誰かと一緒に明日を迎えようとすることも出来るんじゃないか?」
「…………………そうだな。思えば、そんな選択肢もあったのかな」
まるで、俺ではない誰かに問いかけるように、グリムロックは訥々と言葉を零す。
俺にはそれが、まるで選択を誤ったことを責め立てるような讒言にさえ聞こえてしまいそうになるものの、可能な限り正面から受け止めるよう努めた。
これは、グリムロック自身が揺らいでいる証拠だ。戦えなかった自分に対する問題提起を、俺を通して行おうとしている。だからこそ、背けるわけにはいかないと思った。
「だが、俺はこれまでの仲間や自分の行いを否定することも、後悔することもない。運が良いだけかも知れないが、まだ仲間を失ってはいない。それは自分の選択が最善であった結果だと考えているし、何よりも奪った命の重さを無視するような真似はしたくないし、在り得ない。………だから、俺はこれからも、誰かを守る為であれば手段を択ばない」
口先だけの題目で遇するわけにはいかない。初志はどうあれ、俺はこの男の心理の奥底に触れてしまったらしい。それほどに俺が忌々しかったか、これほどに感情を変転させながら向かってく
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