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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十三話 第一次フェザーン侵攻作戦
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する事は先ずありません」
フェザーンを占領する事は先ず無い、その言葉に俺達は顔を見合わせた。改めて司令長官の言葉が思い出される。少々微妙な任務、司令長官はそう言ってはいなかったか……。
「つまり、この侵攻作戦はフェザーンに対する恫喝、そう見てよろしいのでしょうか?」
恐る恐ると言った感じの口調で訊ねるリンテレン提督に司令長官はあっさりと認めた。
「その通りです、リンテレン提督」
司令長官とリンテレン提督の遣り取りにシュムーデ提督が頷いている。どうやら司令長官はフェザーンが自ら交易を止める事を防ぐため、ルビンスキーを恫喝しようとしているようだ。それなら単純に占領しろと言われるよりは納得がいく。しかし、幾つか疑問は有る。
「閣下のお考えは分かりました。先程の非礼、お許しください。しかし、幾つか疑問が有ります。先ずフェザーン回廊に侵攻した場合、反乱軍はどう出るでしょう、黙って見ているとも思えません。相手が兵を出せば帝国と反乱軍の間で戦争が起きます」
「小官もルックナー提督と同じ疑問を持っています。反乱軍にその考えが無くてもルビンスキーが何らかの見返りを提示して出兵を要請する可能性は有るでしょう。その場合反乱軍は安全保障の面だけではなく短期的な利益の面からも出兵を実行するのではないでしょうか」
俺の意見にシュムーデ提督が同調する。恫喝といってもこの場合きわめて反乱軍との戦争になり易いのだ。危険すぎるとしか思えない。そのあたりを目の前の司令長官はどう考えているのか? リンテレン、ルーディッゲもそれぞれの表情で同意を示している。
「フェザーンが反乱軍に出兵を要請することは先ず無いでしょうね。それに要請しても反乱軍が出兵する事はありません」
穏やかな表情で司令長官が俺たちの疑問を一蹴した。
どういうことだろう、司令長官の言葉は謎めいている。フェザーンが反乱軍に出兵を要請しない、要請しても反乱軍は出兵しない……。フェザーンと反乱軍の間はそれほどに悪化しているという事だろうか。しかし、一つ間違えばフェザーン回廊が帝国の手に落ちるのだ、手をこまねいて見ているという事があるのだろうか?
「フェザーンは中立、不可侵を標榜しています。中立、不可侵と言うのは自らが実行し周囲がそれを認め尊重して初めて成立するものです」
「……」
「帝国軍を退けるために反乱軍を引き入れるという事は自ら中立、不可侵を否定することになるでしょう。一時的には成功しても将来的に見ればマイナスです。フェザーンが戦場になることをフェザーン自身が認めたのですから」
つまり、その前にフェザーンが譲歩すると司令長官は見ているのだろうか。しかし少々見通しが甘くは無いだろうか。フェザーンが腹を括った場合、どの道いずれは帝国軍が攻めてくると覚悟した場合、フェザ
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