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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十二話 ヴェストパーレ男爵夫人
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司令長官室に行くと直ぐ応接室に通された。応接室では既に司令長官がソファーに座って待っている。司令長官は俺達を見ると微かに頷きソファーを指差し座るようにと身振りで示した。

「艦隊の状態はどうですか?」
「問題ありません。いつでも出撃できます」
シュムーデ提督の言葉に俺達は同意するかのように頷く。司令長官はそんな俺達を見ると微かに頷いた。傍らに書類袋がある。あの中に命令書があるのかもしれない。

「帝国は間も無く内乱状態になります。卿らにも当然戦いに参加してもらいます」
「望む所です。我々は一体何を?」

意気込むように答えたシュムーデ提督に司令長官は少し困ったような表情を見せた。
「そうですね。少々微妙な任務になりそうです。地味ですし、華々しい戦闘は先ず無いでしょう。ただ、これ無しでは勝利は難しい」

地味、華々しい戦闘は無い。つまり補給か、内心の落胆を押し殺した。補給を馬鹿にするつもりは無い。補給無しで戦えるなどありえないのだ。だが自分がその補給部隊の護衛となれば、重要性は理解していても落胆は禁じえない。

「補給線の防御でしょうか?」
「ええ、フェザーンとオーディンを結ぶラインの維持が任務となります」
フェザーンか……。確かにフェザーンの商人達が運ぶ物資が無ければ帝国は混乱するに違いない。

司令長官とリンテレン提督の会話を聞きながら航路図を頭に思い浮かべた。ブラウンシュバイク、リッテンハイムが敵の本拠地になる以上、フェザーンとの補給線の維持はカストロプ、マリーンドルフ、マールバッハ、アルテナ、ヨーツンハイムの線か。

「なるほど、ブラウンシュバイク、リッテンハイムが使えない以上補給線は特定されますな。それにいささか遠回りになる」
「うむ。卿の言う通りだが貴族達が補給線の切断などと地味な事をやるかな?」
「油断は出来まい。彼らも必死なのだ。切られてからでは遅い」

シュムーデ、リンテレン、ルーディッゲ提督がそれぞれに話す。
「敵は貴族だけではありません」
「?」
司令長官の声に俺達は思わず顔を見合わせた。皆訝しげな表情をしている。

「フェザーンです」
「フェザーン?」
「ええ、フェザーンが自ら交易船の出航を制限、或いは止めるかもしれません」
「!」

フェザーンが交易を止める?
「帝国とフェザーンの関係は冷え切っています。フェザーンにとっては帝国が混乱し弱体化することが望ましいはずです」

「しかし、出航を止める理由がありますか? こちらは航路を警備するのです。安全が確保されているとなれば……」
「シュムーデ提督、被害などいくらでもでっち上げられますよ」
「!」

被害などいくらでもでっち上げられる。そう言った司令長官の顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。確かに帝
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