暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十二話 ヴェストパーレ男爵夫人
[2/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
を直している。
「私をローエングラム伯の幕僚にする、その目的は何処にあるのでしょう?」
ヒルダの気持ちはわかる。ラインハルトの立場は極めて微妙だ、司令長官がどんな考えで自分を幕僚として送り込むのか、それを知らずには受け入れることも拒否する事も出来ない。
「ローエングラム伯にはフロイラインの力が必要だからです」
「……」
司令長官の言葉はあっさりとしたものだった。ますます分からない。ヒルダが聡明なのは私にも分かる。だが司令長官の言はどう取ればいいのだろう。
ヒルダが周囲の認識以上に有能だと見ればよいのか、ラインハルトがヒルダの力を必要とするほど不安定だと見ればよいのか……。私とヒルダだけではない、前面の参謀長たちも困惑した表情を見せている。私の疑問をそのまま口にしたのはヒルダだった。
「閣下、閣下はローエングラム伯の力量に不安をお持ちなのでしょうか? 私は軍人としての教育は受けていません。伯の力になれるとは思いませんが?」
ヴァレンシュタイン司令長官は微かに苦笑した。
「私はローエングラム伯の力量に不安など持った事はありません。軍人としては私よりも余程優秀でしょうね」
「閣下!」
副参謀長のシューマッハ准将が司令長官を窘めた。司令長官が自分を卑下するような事を言ったのが気に入らないのだろう。しかし司令長官は気にする様子も無い。シューマッハ准将に“本当の事です”と言った。
「いずれ帝国を二分する内乱が発生するでしょう。内乱が発生すれば、ローエングラム伯は別働隊を率いて辺境星域の鎮定に向かうことになります」
「……」
宇宙艦隊内部では既に内乱勃発時の対応策が策定されている。それによればラインハルトは六個艦隊を率いて辺境星域の鎮定が命じられることになる。力量に不安の有る人物に任せられる任務ではない。
つまり司令長官はラインハルトを高く評価している。先程の発言からもそれは分かる。にもかかわらずヒルダを幕僚にする。その真意は?
「辺境星域の鎮定にはかなりの時間がかかると思います。当然ですがローエングラム伯には用兵についても占領地の行政についてもかなりの自由裁量権を与える事になるでしょう」
「……」
「困った事はローエングラム伯は戦術家として有能すぎる事です」
「?」
ヴァレンシュタイン司令長官の言葉にまた私達は視線を交わす。戦術家として有能すぎる……、司令長官の言葉は決して好意に満ち溢れたものではなかった。皆それを感じたのだろう、訝しげな表情をしている。
「戦略家としての力量も素晴らしい物を持っているのですけれどね、どうしても戦術的な勝利に拘ってしまう所がある。その結果として戦略的勝利、政略的勝利を疎かにしてしまいかねない」
「……」
「今度の内乱ですが、ただ鎮定すれば良い
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ