暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十一話 面従腹背
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦 487年10月26日   オーディン 宇宙艦隊総旗艦 ロキ  ジークフリード・キルヒアイス



「ジークフリード・キルヒアイスです。宜しくお願いします」
「宜しくね、ジーク」
「……」

総旗艦ロキの艦橋にヴェストパーレ男爵夫人の場違いなまでに明るい声が響いた。その声に周囲から笑いが上がる。ヴァレンシュタイン司令長官も副官のフィッツシモンズ中佐も困ったような表情で笑っている。

艦橋には他に副司令官クルーゼンシュテルン少将、参謀長ワルトハイム少将、分艦隊司令官クナップシュタイン少将、グリルパルツァー少将、トゥルナイゼン少将、副参謀長シューマッハ准将がいる。

彼らの表情は最初、決して好意的なものではなかった。艦橋の雰囲気も何処かぎこちなかった。それが今ではかなりほぐれている。男爵夫人には素直に感謝しよう。

「キルヒアイス准将には参謀として任務についてもらいます。ワルトハイム少将、シューマッハ准将、キルヒアイス准将はこれまで副官として軍歴を積んできました。参謀任務は多少勝手が違うと思います。フォローしてください」

「はっ」
ワルトハイム少将、シューマッハ准将がヴァレンシュタイン司令長官の言葉に答え私を見る。
「宜しくお願いします」
私はもう一度頭を下げた。


四日前の二十二日、ヴァレンシュタイン司令長官は私を幕僚にと望んだ。あの時ラインハルト様は即答できず、私もどうして良いか判らなかった。急いで回答する事は無い。少し考えてから返事をしよう、そんな気持ちだった。もっとも考えても答が出るかどうかは分からなかったが……。

だがその日の夜、私は司令長官の幕僚となる事をラインハルト様に告げた。ラインハルト様はとても驚かれた。自分を捨てるのか、いつも一緒ではないのか、そう言って私を責めた。

責められるのは分かっていた。しかし決心は変えなかった。今のままでは誰も自分を軍人として認めない。ただの幼馴染ではなく、真にラインハルト様の力になれる人間として戻ってくる。そう言ってラインハルト様を説得した、そう言ってラインハルト様を振り切った……。

後悔はしていない。今の私は司令長官の幕僚になる事がもっともラインハルト様の役に立つ事なのだと思っている。ラインハルト様も最後には分かってくれた。

パウル・フォン・オーベルシュタイン准将……。あの日、彼が私を呼び止めた。佐官から将官に昇進したことで勉強会に出席した私を同じく勉強会に出席していた彼が帰り間際に呼び止めたのだ……。





「キルヒアイス准将、少しよろしいかな」
「……」

正直遠慮したかった。統帥本部で開かれた勉強会はあまり楽しいものではなかった。誰もが私が准将であることに疑問を抱き、軽蔑しているのだ。昇進に値する武勲など挙げ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ