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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十一話 面従腹背
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ていない男、ラインハルト様との縁故だけで准将になった男、それが私に対する周囲の評価だった。
そう思われるのも仕方ないかもしれない。皆ラインハルト様の事を皇帝の寵姫の弟だから昇進が早いのだと見ている。私は周囲がそう見ているラインハルト様の副官しかしていないのだ。誰もが私を能力ではなく、ラインハルト様の縁故で昇進したと思っている。
勉強会の最中、何度もヴァレンシュタイン司令長官の提案を受けるべきか、そう考え、ラインハルト様の元を離れるのか、そう自問した。苛まされるような時間だった。一人でゆっくりしたい、そんな気持ちの時にオーベルシュタイン准将は話しかけてきたのだ。うんざりだった。
「余人を交えずに話したいことがある。ローエングラム伯の事だ」
抑揚の無い声だ。周囲を落ち着かせることも有れば、苛立たせる事もある。私は内心の苛立ちを抑えながら
「分かりました」
と彼に答えた。
オーベルシュタイン准将は私を統帥本部内にある比較的小さな会議室に案内した。どうやら事前に使用許可を取っていたらしい。部屋に入ると椅子に座るでもなく、また私に勧めるでもなく話しかけてきた。
「キルヒアイス准将、ヴァレンシュタイン司令長官の提案を受けてはどうかな?」
「……」
「卿にも分かっているはずだ。司令長官の言う通り、今のままでは誰も卿を正しく評価しようとはしない」
そんな事は言われなくても分かっている。だが、彼の抑揚の無い冷徹な口調で指摘されると思わず唇を噛み締めた。
「……お話とはその事でしょうか? 私はローエングラム伯の事だと思っていましたが?」
私の皮肉にも彼は全く動じることが無かった。
「私はその事を話しているつもりだが」
「?」
「卿は昨今のローエングラム伯の立場をどのように考えているかな? 教えて欲しいものだ」
「……」
ラインハルト様の立場? オーベルシュタイン准将、卿は何が言いたい、思わず心の中に不安と疑惑が湧き上がる。まさか、この男、ラインハルト様を……。
私の沈黙をどう取ったのか、オーベルシュタイン准将は薄く笑った。
「答えられぬか、用心しているのかな、それとも猜疑心が強いのか、だが私に警戒は無用だ」
「……」
「私の考えを言おう、ローエングラム伯の立場はきわめて微妙で脆弱だ、危ういと言って良いだろう」
「……。伯爵閣下は宇宙艦隊副司令長官の地位に有ります。卿が何を以ってそのような事を言われるのか、理解に苦しみますね」
オーベルシュタイン准将は冷たく私を見据えた。無機質な彼の義眼が圧倒的な圧力で私を捉える。
「気付いていないのか、それとも気付かぬ振りをしているのか……」
「……」
「伯を庇護する人間がこの帝国に居るかな?」
「!」
囁くような声だったが不思議と耳に届い
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