114章 信也、『詩とは、芸術とは何か?』の講演する
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総合や男子個人で、金メダルに輝いた、内村航平さんにも熱いものを感じました。
金メダルにこだわるのもおかしいですけど、そこから感動的なドラマが生まれますよね。
あの内村さんも、ぼくから見れば、すごい芸術家です!
つまり、人は自然の中で、身体を動かして、活動することによって、
芸術家になるんだし、芸術活動をやっていくんですよ。
と言うか、人は、生まれた赤ちゃんのときから、人を喜ばす、芸術家なんですからね。
そんな誰にでもあるはずの、芸術家の芽とでもいうものを、すくすくと伸び伸びと育ててゆく、
そんな学校の教育こそが大切ですし、みんなが自分の力を信じて、個性を生かして生きることが、
本来のといいますか、幸せを目指せる生き方なんだろうって、おれは思うんです!あっははは」
信也がそう言って一息ついて、演台に用意されたグラスの冷えた水を飲む。
そのあいだ、拍手が鳴りやまない。
「生命なんて、とても誕生できないはずの、過酷な環境の、この広大な宇宙の中で、
生命にとって最適な大自然に恵まれた、奇跡の星が、この地球です。
そんな大自然と人間の相互関係って、どんなものなんでしょうか。
それを、わかりやすく、普遍性、つまり、いつの時代でも通用する言葉で語っているのが、
19世紀の哲学者のカール・マルクスが26歳で書いた『自然哲学』なのだと思います。
『自然哲学』は、晩年の大作『資本論』の根幹をなす思想といわれています。
詩や芸術を尊ぶ心の大切さが、瑞々しい感性で語られていると、おれも感じています。
『資本論』には、資本主義の分析に追われるうちに、そんなマルクスの初心が、
消え失せてしまっているようで、歴史的にも多大な誤解を生んでしまっている気もします。
吉本隆明さんが、『マルクスの自然哲学』っていう文章で、わかりやすく語ってくれているので、
その吉本さんの文章をコピーしてお配りしました。若い人には、ちょっとばかり、
難しい内容ですが、お時間のある時にでも、読んでみてください」
会場からは、拍手がわいた。
「吉本さんが敬愛していて、おれも尊敬している詩人で童話作家の、
みなさんもよくご存じの宮沢賢治は、こんなことを言ってます。
『世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はありえない』って言葉です。
『農民芸術概要』って中の言葉ですが、
おれの心にも、衝撃というか、心を凍らせるような言葉なんです。
吉本隆明さんは、『詩とは何か』という著書で、
『詩とは何か、それは、現代社会の中で口に出せば全世界を凍らせるかもしれないほんとのことを、
かくという行為で口に出すことである。こう答えれば、すくなくともわ
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