第64話 それぞれの旅立ち 中編
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平行に両手で持ち、姿勢を低くして構えた。まるで、獰猛な狼が獲物に向かって飛び掛かるようなそんな構えだった。
「その構えは平突き。ようやく、本気を出す気になったか、歳三」
近藤は土方の構えを見て微笑んだ。
「そういえば、お前が本気になったのは、わしが知る限りでは、これで2回目か。1回目は池田の事件。そして、今回。いいぞ、いいぞ。来い、トシ」
近藤は虎鉄を鞘に納め、両手を大きく広げて土方の攻撃を迎え受けようとした。
「だがな、トシ。温い攻撃であったなら、このわしの拳でお前の頭蓋を打ち砕いてくれる」
近藤は余裕綽綽の笑みを浮かべた。
(よし、いいぞ。これでこそ、作戦に近づいたということ)
土方自身、自分自身でたてた計画はまさに一か八かの賭けとは思ってはいたが、ようやく一つのピースが埋まったことに内心ほくそ笑んだ。
「いくぞ、近藤さん」
土方は両足に力を込めて一気に近藤との間合いを詰めると目にもとまらぬ速さに突きを近藤の体目がけて繰り出した。
最初の一撃でガキンといういつものごとく鈍い音を残した。
近藤の上半身の服は最早ずたぼろで体にかろうじて引っかかってる感じで見るも無残な物と成り果ててはいたが、体は全くの無傷であった。
「トシよ。お前が突きを辞めたときお前の頭蓋は木端微塵になると知れ」
近藤は拳に力を込めた。が、その驕りが命取りになるとは全く予想してはないかった。なぜなら、土方の突きは体から徐々に上へと上がって行くのに気付いていなかったのである。
(未だ!!)
土方は今までは普段構える持ち方で刃を下に向け地面と平行に持っていたが、今は違った。刃を地面と平行に持ちかえ、突きを繰り出し始めたのだった。
そう、土方の狙いは当初の予定通り近藤の目だった。近藤はまだその事に気づかずいた。
(くらえ!!)
土方の突きが狙い通り近藤の両目を貫いた。一瞬の静寂。
手応えは感じていた。今までと違い、鈍い音だけの無意味な突きではなく肉を刺した感触と言った方がいいだろうか。
「ぎえぇーーーーーー!!」
近藤は絶叫を上げると同時に目を押え上半身を仰け反らせた。と同時に目から大量の血が噴きだした。
「お、おのれ、歳三!!やりやがったな」
近藤は力任せに拳を滅茶苦茶に振り回した。が、すでにそこには土方の姿はなく空を打つしかなかった。
土方はといえば、すぐに近藤から離れ不発弾がある方角に脱兎のごとく走りだしていた。
(よし、次の段階にはいるとしよう)
ものの見事に自分の策がはまっていることに土方は喜びを隠せないでいた。
「歳三!!どこだ、どこにいる!!」
近藤は今度は虎鉄を振り回し、強烈な妖気を四方八方へと放ったが当たるわけもなく、悪戯に樹木を切り倒していくだけだった。
「こっちだ、近藤さん」
土
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