54.第四地獄・奈落底界
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先にお披露目する予定だったのですが、なんとオーネスト・ライアーとアズライール・チェンバレットを同時に始末できるチャンスかもしれないとお伺いいたしまして沢山連れてきてしまいました!!」
「おい、冗談だろ……お前ら、壁から離れろ!!」
ヴェルトールの声にはっとして壁を見たココは、思わず悲鳴を上げそうになった。
うぞうぞ、うぞうぞと――極彩色の羽を持った巨大な蝶たちが壁を這いながらこちらに近づいていた。そのすべてが、恐らく魔物。もしあれが一斉に飛び立って自分たちの下に殺到したら――。
「この先には始末したい連中がいる。貴方たちはそれを邪魔せず素直に帰っていれば何も知らずに脱出出来たのですが………まぁ、精々戦闘実験個体としてデータ収集に協力したのちに溶けて消えなさい。大丈夫、証拠は『万物溶解液』のおかげで跡形一つ残りませんので」
前方には強烈な酸の雨、後方には足場のない崩落したエリア。
前門の虎、後門の狼――いや、背水の陣。
逃げ場を失ったことで、剣を抜かずに逃げる道が途絶えた。
身命を賭する絶望的な状況。しかして、愚者の集いはそこに別の意味を見出した。
「時に皆や。黒竜とのドンパチ中にあんなもんが上から降り注いだら流石のオーネストも死ぬよな……?」
「当たり前………だよ、たぶんきっと流石に?アイツもそれ狙ってる訳だし………だとしたらさぁ、ここは友達として逃げる訳にもいかなそうだよね。どーやら私たち、まだオーネストの為に戦えるっぽいじゃん?」
「あーあ、どっちにしろ逃げ場ないんじゃしゃーないか。厳しいことこの上ない状況だけど………一丁恩の押し売りしちゃいましょっ!!」
――逃げる選択肢など、毛頭ない。
未知の敵への不安や恐怖は皆無でもないが、それを上回る覚悟が全員の武器を握る手に力を与える。
黒竜とは別次元の恐怖を内包した魔物との戦いが、オーネストたちの与り知らぬところで幕を開ける。
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