54.第四地獄・奈落底界
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なりとお申し付けを」
それを聞いたキャロラインは――背中に背負っていた自分の槍を抜き放って男の鼻先に突き付けた。
「あんたさぁ、なんで『生き物のにおいがしない』のかなぁ?」
「生き物のにおい………で、ございますか?」
「そーよ。オスにはオスの、メスにはメスの、人間には人間特有の体臭ってもんがあんのよ。フェロモンとか汗とか口臭とか体を洗う石鹸とか身近に触れているものとか、とにかく人間には必ず生活のにおいってモンがあんの」
指摘を受けた瞬間、一瞬――ほんの一瞬だけ、青年の表情に生の感情が乗った。ほんの刹那の間に感じ取った、粘りつくように濃密な、こちらにとって不快感の塊を押し付けられたかのように受け入れがたい視線。余りにも瞬間的過ぎて形容する言葉が見つからないそれを感じた瞬間、この場の全員が確信した。
――こいつ、「敵」だ。
気が付けば、ココは剣を握っていた。ヴェルトールはジャマダハル・ダガーを、ドナとウォノはヴェルトールの意を汲み取ったようにごく自然な動きで剃刀剣と杖を、それぞれがそれぞれの戦う準備を始めていた。
「あたしってホラ、オスのにおいにビンカンだから?だから………分かるのよ、アンタからは人間のにおいがしなくてさぁ………虫の内臓をグチャグチャに掻き混ぜて発酵させたような吐き気のする汚臭がする訳よ」
「ふむ、なるほど。におい……臭いですか。それほど臭うとは誤算でしたねぇ。獣人種なら鼻のいい者は気付くかもしれないとは想定していましたが、いやまっことこれは失敗でした。次からはそれも考えて『創りませんと』、ねぇ」
瞬間、男とキャロラインの間に1M近くある巨大な蝶らしき蟲の魔物が割り込む。反射的にキャロラインは槍を振るってそれを薙ぐ。瞬間、虫の胎が破裂して強烈な悪臭を内包した液体が飛び散った。キャロラインはそれに顔色を変えて跳ね飛ぶように後方に下がり、自分の槍を見て息をのむ。
「溶けてる………カスタムとコーティングを重ねたあたしのアダマンタイト製の槍が……!」
愛用の槍の刃先が、しゅうしゅうと不気味な音をたてて飴細工のように溶けている。
もし撤退が遅れて顔に一粒でも触れていたなら――と、キャロラインは生唾を飲み込んだ。
そして、その溶解液をモロに浴びたはずの男を見て絶句した。
男の体には、溶解液どころかなにかが降りかかった痕跡さえ残っていなかった。
「えぇ、えぇ。この子『たち』の体液は『万物溶解液』という特殊な溶解液になってるんです。凄いでしょう?魔物としての能力はせいぜいが撃破推奨レベル1.5といった酷い有様なのですが、この溶解液の酸性は別格!現在検証している限りではなんと『不壊属性』を除くありとあらゆる物質を溶解させることが出来るのです!本来はもう少し
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