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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
54.第四地獄・奈落底界
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力なのにこれ以上情けない姿を晒したら余計に惨めな気持ちになる。

「いこっか、ドナちゃん」
『ええっ、ココぉ?イイの、待ってなくて?』
「いいの。オーネストって祈りとか待つとかそーいう行動の伴わない感じのコト嫌いだし、どーせ勝ったらアズの鎖を使うなりなんなりして戻ってくるよ。それに59層レベルに長居できるほど私たち強くないから、早めに切り上げよっか」

 現在のメンバーはレベル5のココにレベル4相当のドナ・ウォノ、そして正真正銘のレベル4であるヴェルトールに加えてレベル3のキャロラインという構成だ。50層レベルで絶対に通じない実力ではないが、たった5人で長期間ウロついて無事でいられる場所でもない。幸い5人にはアズ支給の鎖を持っているので町に戻る分には問題ないはずだ。

 問題ない――筈だった。

「おや?もうお帰りになられるので?ぼくとしては在り難い話ですねぇ。宜しければ道を開けてもらえますか?」

 にこにこと、若い男が、その場の誰にも悟られずに立っていた。
 若い男だ。ココとそう変わらないかもしれない。顔立ちは童顔で親しみやすそうにも見えるが、張り付いた面のような無機質な笑みが言いようのない不安を掻き立てられる。そう、初対面で穏やかな口調なのに、その男はどこか――或いはすべてが作り物のような異質さを纏っていた。

 誰が何を言うよりも前に、キャロラインが刺すような視線で男の前に立つ。
 その眼には強い警戒の色が滲んでいた。

「この先、もう道がないんだよね。なのにこっちの道に何の用なの」
「いえいえ、私には空を飛ぶ方法がありますんで、ね」
「っていうかさ………おたく、冒険者とは思えないくらい軽装だよね。しかもこの階層で単独行動とか聞いたこともないんだけど?」

 いつ、どこから現れたのかも知れない男は、白いシャツに茶色のジーンズを身に着け、洒落たサスペンダーが肩にかかっている。革靴と手袋を装着した姿はギルド職員のようにも見えるが、靴の使い込みと本格的な革手袋、そしてベルトに仕込まれた戦鞭らしきものがそれを否定する。

 軽装すぎるのも不審だが、ここまで来て体に汚れの一つもないこともそれに拍車をかけた。普段から余裕綽綽のアズでさえ40層を超えると黒コートに汚れの一つや二つは出来るというのに、この男のシャツはまるで卸したてのように皺ひとつよっていない。
 あからさまな不信の目にもかけらも動じない男は、恭しく胸元に手を置いて微笑む。
 微笑むという形式にのっとった、感情のこもらない表情変化だった。

「ふふふ、こう見えて私は強いんですよ?それに一人の方が集団より逃げるのは楽なんですよねぇ」
「ふーん。ほぉーー……へぇぇぇーーー…………じゃ、最後の質問いいかな?」
「それで通してもらえるのでしたら、なん
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