54.第四地獄・奈落底界
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はすこしばかり回りくどく説明する。
「いいか、強い剣を作るには職人の腕もそうだが、いい金属とそれを溶かす超高熱の炉が必要不可欠だ。その金属が黒竜の骨格及び鱗や爪の部分。そして炉はあの灼熱――恐らく『聖灯』辺りを食い散らかして燃料にしたんだろう。どんな歪な金属も溶かして形状を作り替えれば新たな姿に生まれ変わることが出来る」
それは、つまり、そういうことなのか。
これから訪れるであろう恐ろしい未来に、俺は気が付けば自分の口を手で覆っていた。
「端的に言うと――あの黒竜は攻撃力、防御力、俊敏性などありとあらゆる能力で以前の黒竜を超えている。加えて言うと、奴は恐らく………」
言葉を遮るように、溶岩の繭から四つの巨大な槍がそり上がった。
否、槍ではない。
それは溶岩を撒き散らしながらゆっくりと重力に従ってしなり、広がり、やがて月光を覆う漆黒の天幕のようにばさりと空間を影で塗り潰す。雄々しく、巨大で、そして悪魔的なまでに鋭い4つのそれは次の瞬間、床に叩きつけるほどの威力で「羽ばたいた」。
夢を喰らう怪物が、そのまま現実へ這いずり出る。
其は邪悪と力の象徴にして、人が見た悪夢そのもの。
太古の昔、人間という種を絶望の淵に追いやり神に牙を?こうとした伝説の怪物の、更なる先。
「……失った飛行能力を完全に取り戻している。奴は元来空の支配者――今、この空間の全てが奴の絶対的優位を保証してしまった」
独り言のように呟いたオーネストの言葉を押し潰す轟音が、空間を満たす。
『グゥゥゥウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!』
その咆哮を浴びた瞬間、俺は自分の体から魂が弾き飛ばされるような感覚に歯を食いしばった。
心の底から湧き上がるその感覚は、いったい何なのだろう。20年にも満たない刹那の刻しか生きていない俺には、それを言葉で説明することが出来ない。それでもきっと、この光景を見る全員が俺と同じ思いを抱いている確信があった。
――俺たちに、もう明日は来ない。
直後、黒竜は翼をはためかせ、ユグーへの意趣返しのように天井近くから急速降下し、その巨人のような黒脚を大地に叩きつけ、59層の分厚い岩盤が粉々に砕け散った。
「きゃあああああああッ!?」
「もっと深ク暗ク愚カシイ戦いへ、ワレを誘うカッ!!」
「な、ぁっ………でっタラメすぎんだろぉ……ッ!?」
『真空の爆弾』とは比べるのも烏滸がましいほどの衝撃に喘ぎながら、俺たちは未知未開のダンジョン60層へと叩き落された。
「いつもそうだよな、テメェは……忌々しいぐらいに少しだけ手が届かねぇ癖していつも俺を殺し損ねる。今まで互いに殺しあってきたの
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