54.第四地獄・奈落底界
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ら続けてくれ」
オーネストのこちらを見る目が、絶対零度の筈のリージュの魔法より冷たく鋭く全身を突き刺す。もし視線に攻撃力があるのなら、今頃この脆い体は串刺しにされているのではなかろうか。オーネストならメンチビームで山の一つくらい吹き飛ばせそうだ……が、これ以上余計なことを考えているとリアル串刺しにされそうなので話に集中する。
「恐らく俺たちとの戦いを予測していたわけではなく、元より数千年前に設計された骨董品の体でいつまでも戦えるとは思っていなかったんだろう。だからダンジョンに潜りながらこいつは元の歪な体で騙し騙し戦いながら、自分の体を全てアストラル体に変換して自分自身を設計し直す手筈だけ整えていた」
自身の体を設計し直す、という言葉そのものがオラリオの常識や認識から大きく外れた発想だが、オーネストは当たり前のようにそれを語り、事実それは正しいのだろう。
何のことはない、あちら側の思想から考えればゲームや漫画のボスが第二第三形態を用意しているなど珍しくもないことだ。俺はそれを感覚で――そしてオーネストは感覚だけでなく理屈でも理解している。
ただ、それでも人の話をはなから聞いていないユグーを省いてリージュだけは、全く想像の外側から飛び込んできた理屈に混乱しているようだった。
それはそうだろう、と俺は思う。そもそもこの世界では魔物にまっとうな知性があること自体があまり知られていないのだ。外科手術の概念もほんの一部の医療系ファミリア以外は知らなければ、ダーウィンの進化論だって存在しない。元ある生物の形状が新たな形状に変化するという概念が確立されていないのだ。
「今の体で倒せればそれで良し、倒せなくても消耗はさせられる。そして自身の肉体を製錬する為の莫大な熱量………蒼炎を纏った黒竜は、強くなっているようで所々弱体化した部分があったな?」
「そうだな。熱はすさまじく厄介だったけど、逆を言えば熱対策さえあればむしろ最初の姿よりいなしやすかったくらいだ」
「ああ。あいつ、莫大な熱量で自身の骨格や鱗を製錬し直すついでに、余剰エネルギーで俺たちと遊んでいたのさ。新しい体を作り直している間に俺たちがくたばればこれもまた良し。勝敗がどちらに転んだにせよ、溶岩の繭に入ってしまえば狙いは達成される。なかなかに老獪じゃないか」
「――あの、アキくん。どうやって体を作り替えたのかとか、体を構成するのに熱が必要だったのかみたいな疑問は多々あるんだけど、一つだけ教えて。あの溶岩から出てこようとしている黒竜は、以前の黒竜とどう違うの?」
それは重要かつ切実な疑問だろう。次々に戦闘スタイルを変える黒竜相手ではどんな対策を取ればいいのか確信が持てない。オーネストの知識はそれに対抗しうる唯一の武器だ。オーネストはその質問に、彼にして
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