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Blue Rose
第二十一話 海と坂道の中でその九

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 優花は重厚な木の席に座ってだ、ここでも自分の向かい側に座った岡島に言った。
「何かここは」
「イギリス風だね」
「マジックってお店思い出しました」
「八条駅の前の喫茶店だね」
「あそこの中と一緒ですね」
 この店の中はというのだ。
「木造で」
「その木の色もね」
「同じですね」
「そうだね、外観は違うけれど」
「外観は江田島みたいですね」
「そうそう、海軍兵学校だね」
 今は海上自衛隊幹部候補生学校である、名前は違っているが教育の内容は同じで所謂海軍士官を育てる場所だ。
「あそこと同じでね」
「赤煉瓦ですね」
「赤煉瓦がいいんだよね」
「独特の趣がありますよね」
「そう、イギリス風でね」
「はい、ただ長崎は」
「欧州だとオランダだよ」
 この国になるというのだ。
「どちらかというとね」
「そうですよね」
「出島があったからね」
 江戸時代オランダ人達が住んでいた場所だ、当時の日本は鎖国していたので長崎と平戸だけで貿易をしてオランダ人達はそこに留めていたのだ。
「オランダだね」
「あちらの国ですね」
「けれどね」
「それでもですか」
「このお店はイギリスだよ」
「その国もあるんですね」
「カステラはまた違うけれどね」
 イギリスではないとだ、岡島は笑って言った。
「確かポルトガルかな」
「あちらの国から入ったものですね」
「そうだよ」
「何か色々な国が入っている街ですね」
「蝶々夫人はアメリカでね」
「中華街があって出島も昔あって」
「そしてこうしたお店もあってね」
 そしてというのだ。
「カステラもある」
「そうした場所ですね」
「そうしてそうしたものをね」
「全てですね」
「楽しめばいいんだ」
「それじゃあ」
「カステラは当然として」
 頼むものはというのだ。
「飲みものは何がいいかな」
「紅茶をお願いします」
 優花が選んだ飲みものはこれだった。
「ミルクティーを」
「そちらだね」
「はい」
 そうだとだ、優花は答えた。
「それにします」
「僕もそれにしようかな」
「ミルクティーですか」
「ここは紅茶が美味しいし。それに」
「それに?」
「ここはイギリス風だからね」
 そのこともあってとだ、優花ににこりと笑って話した。
「だからね」
「イギリスはミルクティーだからですね」
「そう、まあ本場のミルクティーより日本のミルクティーの方が美味しい感じがするけれど」
 それでもというのだった。
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