巻ノ五十四 昔の誼その十一
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「何かと話していこう、では御主達は御主達のことをせよ」
「はい、それでは」
「その様にします」
「そしてです」
「戦の用意も」
「その様にな」
こう話してだ、そしてだった。
秀吉は石田達のところから己の御殿大坂城本丸にあるそこに入った、そして正室である北政所ねね、見事な服を着ているがざっくばらんで百姓の女房の様な顔と雰囲気の彼女に尋ねた。
「捨丸はどうじゃ」
「元気ですか」
「おおそうかそうか」
そう聞いてだ、秀吉は笑みになった。
そしてだ、ねねにこうも問うたのだった。
「そしてじゃな」
「茶々殿も」
「それは何よりじゃ」
目を細めさせて言うのだった。
「では今日は御主と共にいよう」
「おや、私とですか」
「うむ、共にいよう」
「茶々殿ではなくて」
「やはりまずは御主じゃ」
笑ってねねにさらに言う。
「わしの女房はな」
「またそう言って浮気を隠しますか?」
「ははは、わしは浮気はしてもな」
それでもというのだ、ねねの横にどっかりと腰を下ろして。
そのうえでだ、こう言ったのだった。
「第一はな」
「私ですか」
「そうじゃ」
何といってもというのだ。
「他にはいらぬ」
「そうじゃあ」
「さて、今夜はな」
「私のところで」
「飲むか」
「そしてお話しますか」
「共にな、しかしな」
ここでだ、また言った秀吉だった。
「近頃どうも母上がな」
「お身体が優れぬと」
「それが気になる、小竹もな」
秀長のことも言う。
「何か身体が悪いな」
「確かに。そう言われますと」
実際にとだ、ねねも応える。
「お義母上も小竹殿も」
「二人共じゃな」
「そう思います、私も」
「わしは母上を大事にしたい」
心からだ、秀吉は言った。
「子としてな」
「ご苦労もかけたので」
「そうじゃ、やはり親を大事にせねばな」
それこそというのだ。
「人ではなくなる」
「だからこそ」
「そうしたい、そして小竹はわしの弟」
真剣な顔になってだ、秀吉はねねに話した。盃はねねが出してくれたがそれはまだ口をつけてはいない。
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