巻ノ五十四 昔の誼その八
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「やはり相模、伊豆はです」
「守れませぬか」
「そうなるかと、最悪でも一万石はです」
大名としての最低限の石高である。
「許してもらえるかと」
「そうですか」
「家だけは残ります」
北条家はというのだ。
「大名として」
「そうですか」
「はい、何とか」
「ですか、しかしです」
「北条殿は、ですな」
「どうしてもわかって頂けません」
首を横に振ってだ、氏規は家康に話した。
「ですから」
「では」
「もうこうなってはです」
「助五郎殿がですか」
「上洛してそして」
そのうえで、というのだ。
「関白様にお会いします」
「そうされますか」
「そしてです」
さらに言うのだった。
「何とか。それがしが出来る限りでです」
「関白様にお話してですか」
「そしてです」
「納得して頂きますか」
「そうします」
「わかり申した、ですがそれでは」
「出来る限りのことをします」
氏規はこうも言った。
「そのうえで何とか」
「そうされますか。ではそれがしも」
「竹千代殿もですか」
「新九郎殿は娘婿、それに助五郎殿とはです」
氏規自身にも言うのだった。
「幼き頃よりの仲、それでは」
「お助け頂けますか」
「約束致します」
是非にという返事だった。
「その様に」
「かたじけない、それでは」
「はい、お願いします」
「それがしも約束します」
天下一の律儀者としてだ、家康は約束した。
「何とか致します」
「では」
「少なくとも新九郎殿のお命と北条家の存続はです」
「守って頂けますか」
「この命にかえても」
こう旧友に約束するのだった、そして実際にだ。
家康は氏規に付き添い上洛して秀吉に話した、秀吉は顔はにこやかに氏規も家康も迎え家康の話を聞いたが。
それでもだ、石田や大谷達にはこう言った。
「戦じゃな」
「そうなりますか」
「北条殿が上洛されなかったから」
「そうなりますか」
「ここは」
「うむ」
その通りという返事だった。
「わしは言ったな」
「はい、北条殿に上洛せよと」
「その様にです」
「確かに言われました」
「その様に」
「これは命じゃった」
頼みではなく、というのだ。
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