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真田十勇士
巻ノ五十四 昔の誼その七

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「これでは」
「それでは」
「何としてもです」
 家康はまた氏規に言った。
「北条殿を説得して下さい」
「戻ってでも」
「そうされるべきです」
「ですか」
「本当に何でしたら」
 それこそとだ、家康はまた氏規に言った。
「拙者も小田原に行きます」
「しかし」
「関白様のお考えはお話した通りです」
「従わねばですな」
「納得されませぬ」
「さすれば」
「行く用意はすぐに整います」
 家康は氏規にこうも言った。
「小田原に」
「ですか」
「どうされますか」
「竹千代殿のお言葉は承りました」
 しかと、とだ。氏規は家康に答えた。
「しかし」
「それでもですか」
「はい、無駄です」
「左様ですか」
「竹千代殿の義は覚えておきまする」
「それは嬉しいことですが」
「それでもです」
 それでもとだ、また言った氏規だった。
「大殿、兄上は考えを変えられませぬ」
「既に新九郎は」
「あの方は竹千代殿と同じお考えです」
 主である彼はというのだ。
「関白様に従われるおつもりです」
「やはりそうですか」
「天下は定まると」
「新しい世に気付かれていますな」
「早く生まれられただけに」
「それは有り難きこと、では」
 家康はここまで聞いて氏規にこう約束した。
「拙者、新九郎殿と民、そして北条家は」
「お守り頂けると」
「はい」
 約束の返事だった。
「そうさせて頂きます」
「そうですか」
「必ずや」
「ですか」
「しかしです」
「領地はですな」
「もう相模、伊豆もです」
 この二国もというのだ。
「最早です」
「守りきれませぬか」
「そうなります」
 このことも言うのだった。
「これでは」
「やはりそうですか」
「はい、ただ」
「ただ、とは」
「一旦降りです」
 そしてとだ、家康は戦になった時のことも氏規に話した。それからのこともだ。
「それから許されるでしょう」
「北条家自体は」
「はい、少なくとも新九郎殿はです」
 彼はというのだ。
「あの方はです」
「まだですね」
「はい、国持大名としてです」
「遇して頂けるというのですか」
「そうなります、しかし」
 それでもというのだ。
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