第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
13話 誰も知らない邂逅
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つまり、今度は俺の目星で捜査を開始するということか。
とはいえ、隠しコンテンツを追い続ける俺に独自のコネクションを求めるのは難しいというもの。ヒヨリの知り合いというならばまだ望みはあるだろうが、レッドプレイヤーに狙われた友人がいて、果たして今日までヒヨリ自身が静観の構えを貫けていただろうか。明らかに目に付くようなアクションがあって然るべきだし、何よりも俺だって無関係ではなかっただろう。結論としてヒヨリに可能性は見出せまい。ティルネルには《エルフ謹製ポーションの独占市場》という圧倒的な強みからエギルを始めとした商人系のコネクションが目立つ。しかし、ヒヨリと同様に関係者に死人が出たような話は全く聞かないというのが現状だ。
「いや、俺もお手上げだな」
「そっカ、それじゃあまた明日集合ダ。場所はリンちゃん達の新居ナー………んモー、リンちゃんってば嫁の欲しがってる物件を速攻で買っちゃうんだかラ〜。このツンデレめェ〜」
「新居とか言うな。あれはそもそも俺だって不本意だったんだぞ」
「不本意なのにお花畑の中の一件屋をポケットマネーで買っちゃうカ? いや買わないネ!」
「だから不本意ながら買っちまったって言ってるだろうが」
物件購入時の状況を知らないからこそ好き放題に言えるのだ。
女性陣に孤軍奮闘し、しかし勢いと涙目で押し切られ、周囲の訝しむ視線に心を折られる苦痛たるや、まさに人間の受けられる責め苦の許容範囲を優に超える凄惨。ただお通りすがりに女の子を泣かせただの、やれなんだと勝手気儘に言い捨てられ、刻一刻と時が進むにつれ人の心に在っては為らない傷を容易く刻み付ける。思い出すだけでも寒気がするようだ。
………とはいえ、ヒヨリは毎日機嫌が良いし、周囲の草花はティルネルのポーション作成における素材となるし、得られる恩恵も馬鹿にはならないという点だけは評価に値する。居心地はあまり良くないのだが。
「そーいうことデ、また明日ナー」
氷も解けてかさの増した冷水を流し込み、僅かに残った氷も咀嚼して、アルゴはそそくさと主街区の人混みに溶けていった。カフェのテーブルには俺達とアルゴの分まで含まれた勘定が残され、情報収集も呆気なく一つの区切りを付けられる。
「こういう情報収集って、燐ちゃんも得意そうじゃなかったかな?」
「人間相手は門外漢だ。俺じゃどこまで行ってもアルゴの助手止まりってところだな」
「そんなに違うの?」
「違う。全然違う」
プレイヤーにもNPCにも誠心誠意、全身全霊を以て接するヒヨリには双方の差など些末な問題なのかも知れないが、やはり対人スキルの熟練度が乏しい俺にとってはその境地に至るには困難窮まるのかも知れない。
第一、俺が語るのもおこがましいが、この捜査は聴取を受ける側の心
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