閑話 ―乙女の受難―
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ほんと?」
「はい」
「……」
俄かには信じがたいが秋蘭のお墨付きである。彼女に案内された料亭はどこも一流だったし、手作りの料理はどれも絶品な彼女。
そんな秋蘭が真顔で“悪くない”と口にしたのだ。退く理由はもう無い。
彼女の忠臣ぶりに報いるためにも――と、自分に言って聞かせ。華琳は意を決して飛蝗を口にした。
「……?」
そんな華琳も秋蘭と同様、口にした瞬間呆気にとられる。
想像していたような味ではないのだ。サクサクとした食感にほのかな塩気。確かに悪くない。
見た目の醜悪さを除けばだが……。
バッタ炒めと覇王の半刻にも及ぶ死闘は、あっけない形で決着が付いた。
「しかし、袁紹殿はどこでこの調理法を?」
「さぁね。聞いた所で、異国の文献を見たとはぐらかされるだけよ」
「……益々、掴み所が無い御仁ですね」
「そうね、だからこそ―――」
――倒し甲斐がある。
食後の雑談で改めて闘志を燃やしていると。通路の方から乙女の悲鳴が聞こえてきた。
異変を察知した秋蘭がすぐさま弓矢を手にして現場に向かうと、李典に羽交い絞めにされている于禁と、その于禁にじりじりと近寄っていく楽進の姿を見つけた。
「一体これは、どう言う状況なのだ……」
「あ、秋蘭様! 助けて欲しいの!!」
「秋蘭様からも沙和に言ってやって下さい!」
「……とりあえず説明してくれ」
その場で比較的冷静だった李典によると、華琳により昼食になったバッタ炒めを于禁が頑として口にしないらしい。
規律に厳しい楽進がそれを良しとせず、主の命でもある故、李典も協力して食べさせようとしているのだが――……。
「それでこの状況か、羽交い絞めはやりすぎだろう」
「しかし、こうでもしないと逃げ出すので……。捕まえたのも四回目です」
「ほう、凪や真桜から三回も逃げ出せたのか」
「いやいや、そこ感心するとこちゃうで」
真桜が鋭くつっこむが、秋蘭が感心するのも無理は無い。
三羽鳥として知られるこの三人娘は、各人が得意な事に関して特化している。
武の楽進、カラクリの李典、しかし于禁は未だ何も開花していない。
そんな彼女が身体能力において、各上である楽進から三回も逃げ切れたのだから驚きだ。
「ぜぇぇぇっっったい、嫌なの!」
于禁は魏の誰よりもオシャレに敏感な女性である。誰よりも女らしく生きようとする彼女は、誰よりも虫が苦手であった。
「沙和」
「!?」
そんな于禁の前に、騒ぎを聞きつけた華琳が姿を現した。
雲の上の存在である主の登場に、緊張から震えが止まらない于禁だったが。
彼女を安心させるように華琳は微笑を浮かべなが
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