閑話 ―乙女の受難―
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
してすぐ、雑事を任せていた郭嘉が訪ねてきた。
華琳は目を書簡から移し応対する。
「三度目の食料が今しがた届きました」
「それは重畳。値はいくら程掛かったのかしら」
「それが……」
「その様子だと予想通り、吊り上げられたようね」
思わず溜息を洩らす。食料の高騰化は頭の痛い問題だ。
各地の農家や商人達だって慈善事業では無い、価格を上げても需要があるなら高く売るだけだ。
華琳に彼らを攻める事は出来ないが、どうにか価格を抑えられないかと頭を悩ませていた。
「このままでは我が国の財が底を尽きてしまいます」
「とは言え、領民を見殺しにするわけにはいかないわ。足りない分は屋敷の備蓄で埋めなさい」
「華琳様、それでは何かあったときに……!」
「その“何か”が今なのよ。躊躇していては手遅れになるわ」
華琳の考えは間違っていない。事実、領民達が飢えてきているのだ。
彼等は一日一食で耐え忍んでいる。更に食を減らすことになれば、体力の低い者達から犠牲者が出始めるだろう。
領民達には食料を求めて魏国から離れると言う選択肢もあったが、一人として動こうとしない。
黄巾発足以前から領地改革に臨み、幾度も外敵から守ってきた太守。
建国後もこうして手を差し伸べてくれる。そんな国を見捨てる訳にはいかない。
今の時代、収めた税を還元すのという“当たり前”が出来る君主が何人いるだろうか。
華琳とその家臣達、そして建国して間もない魏国は、領民達に愛され信頼されているのだ。
「あ、それから陽国より書簡が届きました。袁紹殿からです」
「……随分早いわね」
暗い空気を何とかしようと、郭嘉が話題を変えるように文を差し出した。
蝗害が起きた時から色んな対策を魏国と華琳は行ってきた。
その中の一つに袁陽に向けた文がある。内容は事態を打開する知恵を貸して欲しいというもの。
とはいえ、様々な対策を労した挙句、現状が過ぎるまで耐え忍ぶしかないと結論に至った為。
袁紹に宛てた文は、文字通り“御輿にも縋る思い”で書かれたものだ。
その中には少なからず『最低でも食料や物資を融通してくれるだろう』といった打算も含まれていた。
勿論そうなれば相応の財を送る手筈である。これから覇を競う相手に一方的な借りを作るなど、曹孟徳の名が許さないのだ。
「我が国の賢人達をして不可能とされた現状の打開。流石の名族もお手上げかしら?」
文の封を解きながら自分に言い聞かせるように呟く、それでも湧き上がる高揚感は押さえ切れなかった。
華琳の友、袁紹は実に変わった人物だ。その特徴の一つに異国の知識がある。
大陸の常識を覆しかねない発想とその知識で、私塾に居た頃なんども舌
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ