閑話 ―乙女の受難―
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袁陽が建国してから早一ヶ月。華琳もまた、反乱を起こした黒山軍を破り“魏”という名の国を建国していた。
遅れをとったのには理由がある。漢王朝の権威が落ち、浮き足立っていた各地を繋ぎ止めていた袁紹の存在が原因だ。
力を失ったとは言え王朝はまだ存在している。袁紹を含めた各地の諸侯達は未だにその臣下だ。
そんな中で建国などすれば―――たちまち袁紹率いる連合軍に攻め滅ぼされるだろう。
それを恐れ、大陸中が袁紹の行動を静観していたのだ。
ではいち早く建国した袁陽を攻め滅ぼすために結託すれば――……。
事はそこまで単純では無かった。
袁陽と敵対するには彼らは余りにも強大すぎたのだ。その力は黄巾と連合軍で知れ渡っている。
果たして徒党を組んだところで袁陽に勝てるだろうか……?
浮き足立っている現状で最善の行動は、袁陽を味方に付ける事である。
それが大多数の太守達の認識だ。反袁陽連合軍を組織した所で離反者が出ないとは限らない。
寧ろそれを機に袁陽の信用を買うことが出来る。底が知れない袁陽と敵対するよりも建設的だ。
それでも彼女達、華琳率いる曹操軍が居る。
兵数では袁陽に劣るかもしれないが、将兵の能力は決して遅れてはいない。
彼女が連合を率いて袁陽を攻め立てれば――。
そこまで考えたところで、各地の名士達は袁紹と曹操が知己の間柄である事を思い出した。
大陸でも一二を争う勢力が結託しない保証は無い。魏国が建国した後もその不安が消える事はなかった。
建国したことで油断させ、反袁陽派の者達を一網打尽にする策かもしれない。
袁陽が大国故に、慎重に静観していた彼らの猜疑心が止まらず。
袁陽は堂々と建国し、それに続く形で曹魏が誕生したのだ。
そんな新国の君主である華琳は現在、眉間に皺を寄せながら淡々と政務をこなしていた。
?固や匈奴の10余万の軍勢に大勝し、領地はおろか周辺地域の羨望を浴びた中での建国。
順調なすべり出しの筈であった。そう、いま現在部屋に侵入してきたソレさえ無ければ。
「秋蘭」
「ハッ」
華琳の意思を汲み取り、同室で政務の補佐を行っていた秋蘭が弓矢を取り出す。
室内にも関わらず弦を引き、小さなソレに向かって矢を放った。
矢は吸い込まれるように刺さり、着弾の衝撃でソレは四散した。
「……」
ソレの無残な姿を確認した華琳は、いくらか溜飲が下りたのか書簡に目を戻した。
主の様子に秋蘭は溜息と共に緊張を緩め、弓をしまう。
ソレとは即ち飛蝗であった。
その才覚故に忘れがちだが華琳も乙女である。町娘のように騒ぎ立てたりはしないものの、目に付けば嫌悪感を現し、寝所で見かけ
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