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俺の四畳半が最近安らげない件
死者を食らう茸
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気が付かない…そうそう、先日恐ろしいことが」
「―――なんだ」
「幽霊仲間の中で、画期的な出現の仕方を考えた奴がおりました。深夜のオフィスで高速ブラインドタッチの音を響かせるってやつなんですが…どんな深夜になっても人気が絶えないし、しびれを切らして音出してみたら…『その陰に誰かいるぞー!!』『なにてめぇの仕事してんだ!!納期近いやつを優先して手伝え!!』…とか目の下真っ黒な社員が目を血走らせて捜索始めて…なんかよそ者狩りみたいな雰囲気になっちゃって……あぁ、怖かった…」
「すげぇブラック企業だな…おいその会社名晒せ。そこには絶対就職しない」
「うひょははははは…大丈夫大丈夫、あなたの大学じゃ採用されませんって!あぁもう片腹痛いったらありゃしない」
―――再度殺すぞこの野郎。
「…なんか話聞いてると、何かを激しく恨んでるって感じがしないんだけど」
何がしたいんだこの男は。
「―――私はね、生前からずっと不快に思っていたのです」
いよいよ聞けるのか。恨みの理由を。
「あの、幽霊と呼ばれる連中の不躾さを」


―――はい?


「例えばあなた、赤の他人に聞いて欲しい事があればどのようにいたしますか?」
「えっ…あぁ、まず自己紹介がないと始まらない…かな」
「エグザクトリィ!ほんそれ!」
山田はパチンと指を鳴らして身を乗り出してきた。何だよ突然そのノリは。こいつすげぇやりづらいんだけど。
「物陰から突然血みどろで現れるとか!生木を引き裂くような激しいラップ音とか!!なんかね、心霊現象というのは不躾過ぎるだろうと生前から思っていたのです!私は理系の端くれとして、もっと理性的なアプローチを試みたいと常々思っているのですよ」
「いやいやいや、ちょっと待とうか」
「何です?」
「あんた…山田さんだっけ。山田さんが考える理系による、理性的なアプローチが、これか」
俺は足元を覆い尽くす茸の山を指さした。
「えぇもう!この茸がね実は屍鬼茸と呼ばれる死体に生えるという…これでね、ここで死人が出ていますよ、という極めてアカデミックなアプローチをこの度」
「迷惑なんだよ!!もうこの菌床にされた畳、張替すら出来ないんだぞ!!敷金戻らないじゃねぇか!!」
山田は『はっそう言えば』みたいな顔をしてポカンと口を開けた。
「そっそれはそれはとんだ失礼を!私としたことが敷金のことをすっかり失念いたしまして、いやもう…汗顔の至りで」
…いや、この気の利かなさはある意味理系的ではあるがな…
「……食べられる茸にいたしましょうか?しいたけとか……」
「それだと部屋の真ん中にしいたけ生えただけになるぞ。ますます意味わかんねぇよ」
「はっ私としたことが!!いや違うんです、待って下さい、もっと理系なアプローチを」
…その手段が目的にすり替わりが
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