第三話 INグレンダン(その1)
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槍殻都市グレンダン、その中心部に位置する王宮に近い一等住宅地。ここは都市の権力者やそれに準ずる者たちの邸宅が立ち並ぶ一角でありその中でも一際王宮に近く、また豪壮な屋敷の前に一人の少女が立っていた。
門衛として詰める煌びやかな服装の男はその少女を追い払おうとしていた。
「ここをどこだと思っているんだ、グレンダンが三王家の一つロンスマイア家だぞ。お前のような者が近づくような所ではない」
そう言われるのも無理はなく長旅による傷みで薄汚れた旅装、はじめは上等の物だったのだろうが今は幾らかくたびれており他には鞄を持っているだけ。明らかに外来者であり、錬金鋼を所持していることから武芸者であることが分かるくらいである。
他の都市では錬金鋼を預けなければ都市内部に入ることはできないがグレンダンではそんなことはない。その制度は元々外来の不良武芸者による犯罪を防ぐことが目的だが、放浪バスの往来が少ないグレンダンにおいては他都市から流入してくる物はできるだけ捉えようという風潮があるため規制が他よりも緩くなっているのである。
とはいえ外来武芸者による犯罪確率が他の都市よりも高いかといえばそんなことはない。半端な実力では武芸者とはみなされないグレンダン、そもそものレベルが高く抑止力となっているからだ。
それはともかくその少女、ニーナ・アントークは困っていた。かつての約束通りクラリーベル・ノイエラン・ロンスマイア、クララに会いに来たものの絶賛門前払いの最中だからだ。とはいえ旅装が汚れているのはどうしようもなく当然ながらこの都市で身分を証明するような物は無い。クララの名前を出した所で状況が改善されないだろうことも理解していた。相手は門衛が言うように三王家の一つロンスマイア家の当主(になると本人が別れ際に言っていた)であり、天剣授受者でもある超がつくほどのVIPである。
そんなところへいきなり訪ねてきた人間が名前を出したところで相手にされないだろうし、かといって紹介をしてもらえるような人脈も持ち合わせていない。グレンダンに知人がいないわけではないが同じような超VIPか、あるいは一般市民であるためその線から辿ることは困難だと思われた。
そんな八方塞がりのような状況のニーナを救ったのは空中から響いた声だった。
『その方のことなら私が保証します』
二人が見上げた先には蝶型の念威端子が浮かんでいた。途端に姿勢を正す門衛。
「キュアンティス卿、よろしいのですか」
『ええ、構いません。それと初めて……ではないのですが名乗るのは初めてでしたね。私はエルスマウ・キュアンティス・フォーア、陛下より天剣を授かったものです。クラリーベル様を訪ねて来られたということでよろしいですか』
「ああ、そのつもりだが」
話が急に進むことに若干戸惑うニーナ、天剣という地位の高さ
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