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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十八話 曙光
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がら首を横に振った。

「恐れ入ります、では本心を……。これ以上、御婦人方をブラウンシュバイク公邸、リッテンハイム侯邸に留め置く事は危険だと思われます。皇帝陛下の御血筋の方の身を守るためにも、陛下の下にお返ししたいのです」

危険? 反逆するからその前に返しておく、そういうことだろうか?
「なるほど、このままではブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は暗殺される、そういうことかな?」
「はい、残念なことですが」

ゲルラッハ子爵とフェルナー准将の会話に部屋がざわめいた。暗殺? なるほど、旗頭として担ぎ上げるのは、皇族のほうが都合が良いだろう、彼女達と自分の身を守るためには返したほうが良いのは確かだ。

「どう思うかな、ヴァレンシュタイン元帥」
リヒテンラーデ侯が問いかけた。皆の視線が司令長官に集まる。おそらく司令長官は断りたいだろう。受け入れればそれだけ貴族達の暴発は遅くなるに違いない。それは望ましい事ではない。

「受け入れましょう。名目は陛下へのご機嫌伺いです、断る理由はありません。それに陛下も改革の実行を決めたとは言え、御婦人方の安否は心配なはずです」

司令長官の言葉に部屋の空気が緩んだ。ヴァレンシュタイン司令長官が反対すると考えたのは俺だけではないようだ。司令長官の言葉が続く。

「それにしても上手い手を考えましたね。彼女達はトランプのジョーカーのようなものです。あるゲームでは最強だが、別のゲームでは持っているだけで負けになる。今のゲームはババ抜きですか」

ヴァレンシュタイン司令長官の言葉に部屋に笑いが起きた。
「失礼だぞ、司令長官。ババ抜きなどと言っては気を悪くされる方がいよう」
「軍務尚書の言うとおりだ。女性というのは年寄り扱いされるのを嫌がるからな」

エーレンベルク、シュタインホフ両元帥の笑い混じりの窘めにまた笑いが起きた。両元帥は結構女性に詳しいようだ。

「それで良いのだな、ヴァレンシュタイン。彼らは時間稼ぎをするつもりじゃが」
リヒテンラーデ侯も苦笑交じりの声で司令長官に視線を当てながら尋ねた。

「構いません。貴族達の暴発はこんな事では止まりません。時間稼ぎには到底ならないはずです」
笑いが収まり、皆の視線がヴァレンシュタイン司令長官にまた集中する。

その視線を気にすることも無く司令長官は穏やかな表情のまま、フェルナー准将に話しかけた。
「アントン、ブラウンシュバイク公邸は来客が多いようだね。彼らが何を言っているかここで話してくれないか、遠慮はいらない」

フェルナー准将は困った顔を一瞬だけ見せたが、直ぐに笑みを浮かべ直して答えた。
「良いだろう。リヒテンラーデ侯とヴァレンシュタイン元帥は陛下を惑わし、帝国を私物化しようとしている。そのために先ず、帝国の藩屏た
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