第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#10
DARK BLUE MOONU〜CRUCIFY MY LOVE〜
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言った。
「確かに、俄には信じがたい話ですが、でも、
“貴女のような女性がそんな 「嘘」 をつくでしょうか?”」
そう言われた時の自分は、果たして一体どんな顔をしていたのか?
隣で笑っていたマルコシアスが静かになったのを覚えている位で、記憶は曖昧だ。
そんな自分を後目に、彼はゆっくりと言い含めるように続けた。
「貴女のように理知的で聡明な方が、わざわざ人を騙す為に作り話まで用意して、
こんな場所に連れ込むというコトの方がボクには信じられない話なので、
だから、どれだけ想像を超えた話だとしてもソレは本当なんだと、そう想いました。
ウソをつくなら、そんな人喰いのバケモノやフレイムヘイズなんてコトは言わず、
もっと他人が信じるような話にすると想いますし」
あくまで澄んだ琥珀色の瞳。
そして、少しも自分を疑っていない表情。
その中性的な美男子の姿に、彼女は、マージョリーは、
かつて自分の傍にいた、一人の少女の存在を折り重ねた。
(……ル、ルゥ……?)
彼の背後に、同化するようにして浮かび上がった、少女の幻 象
幾星霜の時を経たとしても、決して色褪せるコトのない、汚れ無き姿。
『マー姉サマ……』
格子ガラスから店内に降り注ぐ緩やかな陽光の中、
彼女の 『声』 が聴こえたような気がした。
今はもう、この世のどこにもいない彼女の声が。
己がフレイムヘイズと成る最大の理由となった、
この世の何よりも清らかで優しい心を持った少女の声が。
少なくとも、マージョリーにはそうとしか想えなかった。
「……!……ッ!」
自然と、涙が溢れてきた。
止めようにも、止められなかった。
彼女を永遠に失って以来、もう何百年経ったか解らない、
とうの昔に涸れ果てた筈の涙だった。
「どうしたんですか!? ミス・マージョリー!?」
「オイオイオイ!? 何があった!?
我が移り気なヒロイン、マージョリー・ドー!!」
傍で青年と喋る本が心底己を案じた声で問いかけた。
「なんでも……ない……!」
そう応えるのが、精一杯だった。
「本当に……何でも……ない……のよ……!」
何もしてあげられなかった。
護ってやることもできなかった。
この身を犠牲にしても、スベテを失っても、
『アノ娘』 だけは救ってみせると誓った筈なのに。
“それどころか”
だから自分に、悔やむ資格はない。泣く資格すらもないのだと、
マージョリーは血を轢き絞るような想いで嗚咽を噛み殺した。
開いた胸元で鈍く光る、銀のロザリオをギュッと握りしめたまま。
【3】
『現在の状況』
花京院→マージョリー・ドー
=まだ 『能
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