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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#10
DARK BLUE MOONU〜CRUCIFY MY LOVE〜
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に慣れていないのか、先刻よりも赤味が差した表情で
自分に向き直った彼女に、花京院が指差した先。
「……」
 立ち上がった自分の傍らに、注文された紅茶を運んできたウエイトレスが
彼女の迫力に気圧されたのか困惑顔で佇んでいた。
「……」
 縁のない眼鏡(グラス)越しにその罪なきウエイトレスを睨んだ美女は、
無言で木製のトレイから高級そうなカップを無造作に取り上げる。
 そして、湯気の上がっている熱湯寸前の中身を、まるで出陣前の乾杯の如く
いきなり全部喉に流し込もうとした刹那、
「あっ……!」
眼前の美男子が想わず声を漏らした。
「……?」
 不審な視線でカップを持ったまま花京院をみる美女。
 脇のウエイトレスも何故か同様に彼へと視線を向けている。
「や、火傷をしますよ。急ぐにしても少し冷ましてからでないと」
 そう言って、自分の行為を押し留めようとでもするかのように立ち上がっている。
「……」
 火傷。
 蒼炎の魔獣の化身で在る自分には一番縁遠い言葉だが、
ソノ自分に対しこの目の前の脆弱な人間は
『そんなコトを本気で心配している』
 ソレが心の見えにくい場所で、妙にくすぐったくて気恥ずかしくて。
 だから青年の行為に毒気を抜かれたのか、
美女はソーサーごとカップをテーブルの上に置き不承不承席につく。  
「わ、わかったわよ。まあ、お茶を飲む時間くらいはあってもいいわ」
「……」
 それを聞いた目の前の青年は本気で安心したのか、
先刻街路で見せていたような心安らぐ微笑を再び口元に浮かべている。
 美女はソレに再び己のペースを乱されないよう双眸を閉じ、
カップをルージュで彩られた口唇に運ぶ。
 セカンド・フラッシュの柔らかな口当たりと、
マスカット・フレバー独特の深い甘味。
 想えば、こうやって誰かとお茶を嗜むコト等、
もう遙か遠い昔に忘れてしまったような気がする。 
 掛け替えのない 『あの娘』 を、この腕の中で永遠に失ってしまったアノ時から。
 クラシックの穏やかな旋律とロイヤル・ダージリンの爽やかな香り。
 その自分の眼前で優美な仕草で紅茶を嗜んでいる美男子。
 血で血を洗う凄惨なる日々を今日まで生きてきた自分には、
もう二度と永遠に訪れるコトはないと想っていた平穏。
(……)
 まぁ、確かに、少々性急過ぎたのかもしれない。
 このカップの澄み切ったオレンジ色の液体がなくなるまで、
異次元世界の能力者 “フレイムヘイズ” と
ヒトを喰らう異界のバケモノ“紅世の徒”
ソノ概要くらいは説明してやってもいいかもしれない。
 短い間とはいえ同じ目的の為に行動を共にする者なのだから。
 そう想い目の前の美男子をみつめていた美女の、
ラピスラズリの破片で飾られた耳に届く電子
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