第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#10
DARK BLUE MOONU〜CRUCIFY MY LOVE〜
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鉄槌が即座に撃ち落とされる。
(だから、何で喋るんだ? しかも言わなくてもいいコトまで……)
俄には信じがたい超常的な現象だが、
生来の性質上そのような事象には馴れている美男子は
伏せた視線で 『本』 を視る。
その彼の真向かいで、
(ミス、マージョリー?)
深い菫色の瞳を微かに瞬かせた美女が、
鮮やかに染め上げられた栗色の髪を一度たおやかに掻きあげた。
今まで “案内人” に、姐さん、姉御、お姉さま等と呼ばれたコトは多々あるが、
このような呼び名は初めてだ。
今までの人間は良きにしろ悪きにしろ、
必ず強者で在る自分の存在に媚び諂ってくるのが当然だったから。
しかしただの人間にそのような呼び方をされたコトに対し、
プライドが苛立つと想ったが自分でも意外なほど心は平静だ。
否、それどころか、悪く、ない。
そう、悪くない気分だ。
「もう一回呼んで」
美女は開いた胸元の前でその部分を強調するように腕を組むと、
眼前の花京院にそう促した。
「え?」
自分の意図が伝わらなかったのか、特徴的な学生服姿の美男子は
瞳を見開いてそう聞き返す。
どこぞの殺人鬼が聞いたのなら、
「質問を質問で(以下簡略)疑問文には疑問文で(うるさい)」だが、
美女は別段苛立った様子もなく静かに諭す。
「私のコト、さっきなんて呼んだの?」
そう言いながら麗しい脚線美をテーブルの下で組み替える彼女へ
花京院は店内に流れるクラシックに乗せるように
「ミス・マージョリー」
美女の深い菫色の双眸から己の澄んだ琥珀色の瞳を逸らさずに言った。
「……」
気の所為か、それとも外の温和な気候の所為なのか、
純白に粧された頬にほんの少しだけ赤味を差したその美女、マージョリー・ドーは、
「いいわ。その “呼び方” で。
私もアンタの事 “ノリアキ” って呼ぶから」
手持ち無沙汰にもう一度テーブルの下で脚を組み替えた。
「それじゃあ、早速 『仕事』 に取り掛かるわよ。ノリアキ。
手当はその働きに応じてきちんと支払うから安心なさい」
「え? あ、はぁ」
何をするかは解らないが、どうやら拒否権は端から自分に与えられていないらしい。
異論の余地を与えぬままに中性的な風貌の美男子を自分の助手につけた美女は、
テーブルの上に無造作に放ってあった黒いレザーのブックホルダーを颯爽と肩にかけ
立ち上がる。
「取りあえずこの街の大まかな構造と風習、趨勢なんかを実地で教えて。
それから、最近起こった妙な事件や異変なんかが在った場所の聞き込みは
アンタに任せるわ。ノリアキ」
そう言っていくわよと自分に背を向ける美女を花京院は呼び止める。
「あ、あの、ミス・マージョリー」
「な、なによ?」
まだ 「呼び名」
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