第百十五話
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S《無明剣》を回避したのだ。いくら高速と言えども突き――幾分か側面にズレてしまえば、確実に回避されてしまう。
「せぇぇぇい!」
そしてスメラギのOSS《テュールの隻腕》も強制終了し、今度はこちらがソードスキルの隙を突かれる番だった。空を裂いたOSS《無明剣》の隙を晒す俺に、不思議と俺と似通った気合いの叫びを伴って、スメラギの野太刀が煌めき――
「な――?」
――スメラギの腕と翼は斬り裂かれていた。もちろん斬り裂いたのは俺と日本刀《銀ノ月》であり、血を払うように刀身を振り払うとともに、翼を失ったスメラギは地上に落下していった。
「動くなよ」
地上に翼を失って落下したスメラギは、何とかそのHPを保ってはいたが、日本刀《銀ノ月》が首に向けられていた。リメインライトにはなっていないものの、勝敗は明らかな決着にスメラギは両手を上げた。
「……降参、だ」
溜め息混じりに放たれたスメラギの一言に、俺は日本刀《銀ノ月》を鞘にしまってポーションを飲み込んだ。最後まで倒す気はなく、スメラギも今更反撃する気はないらしく、苦笑とともに無抵抗の意志を示していた。
「最後。どうやって俺の腕と翼を斬り裂いた?」
「OSSは三段突きじゃないってことだ」
最後の決着に関わる攻防への問いについて、その返答だけでスメラギは察したらしい。こちらのOSSは、同じタイミングで別の箇所を突く三段突きだけではない、ということ――三つの突きが避けられた時の為に、素早く移行される側面への横斬りがあるということを。突きというのは元来、横斬りへの派生が出来やすい攻撃方法であり、例え突きが三段突きだろうと例に漏れない。
それが俺の連続『四連撃』OSS《無明剣》。三段突きとその直後に放たれる横斬りである。
「手の内を先に見たと思っていたが……まだ隠していたか」
悔しげなスメラギの声が耳に残る。以前にスメラギと初撃決着モードでデュエルした時には、三段突きのみで決着がついたため、スメラギはこの最後の四連撃目のことは知らなかった。この情報の間違いを利用した一撃だったために、もう成功することはないだろうが……何とか勝利は納めた。
「あとは……ダンジョン内でのことだけだな」
――だが、俺はここで失念していたことがあった。この層の特異な迷宮区の入口について、攻略組にも知り得ない情報のことを。アインクラッド攻略当時に、何の変哲もない中層になったこの層だったが、一般プレイヤーはわざわざ好き好んで、偽の入口には入ろうとしなかったため――
――オレンジプレイヤーの、格好の居所になっていたのだ。
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