第76話命の重さ
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科の前は外科にいたんですよね?」
「そうだよ」
「えっと、不躾っていうか、ものすごく無神経な質問だと思いますけど・・・」
外科にいた安岐さんにこんなことを聞くのは完全に失礼だと思う。けど、どうしても聞きたいーーー
「亡くなった患者さんのことって、どのくらい覚えてるものですか?」
外科にいた安岐さんは知ってるはずだ。手術を完了して救うことが出来た患者さんの命の他に、救うことが出来なくて亡くなってしまった患者さんの命を。そしてその患者さんの記憶がどれだけ残るものなのか。
「そうだね・・・思い出そうとすれば、顔も名前も浮かんでくるね。ほんの一時間、同じ手術室にいた患者さんも・・・うん。覚えてる。亡くなった患者さんはもちろん、あの通り魔事件で左腕を失なったキミの辛そうな顔も覚えてる」
そうか、覚えてるんだ、思い出せるんだ。顔も、名前も全部、全部思い出せるんだーーー
「忘れたい、って思ったことはありませんか?」
「そうだね・・・これは答えになってるかどうか分からないんだけど、人って、それが忘れるべきことなら、ちゃんと忘れてしまうんじゃないかな。忘れたいとも思いすらしないで。だってさ、忘れたいと思う回数が多ければ多いほど、むしろそのほか記憶は強く、確かなものになっていくでしょ?なら心の奥底、無意識の中では、本当は忘れちゃダメだって思ってるんじゃないかな」
忘れるべきことは、時間の経過と共に自然と忘れられる。それとは逆に、忘れたい記憶は、忘れたいと思えば思うほど、自分の心を強く蝕んでしまう。忘れちゃいけないって、無意識にそう思ってるから。その理屈だったらーーー
「だったらオレは、とんでもない人でなしですね」
この数年で兄貴のことを散々人でなしって言ってたけど、オレはそれを遥かに越えた人でなしだ。だってオレはーーー
「オレはSAO中でプレイヤーを・・・人を四人殺してるんです」
人を殺したことを、昨日まで忘れていたクソ野郎なんだから。
「彼らは全員殺人者だったけど・・・殺さずに無力化する選択肢はオレにはちゃんとあった。でもオレは彼らを殺しました。その四人は死んだ友達の仇だと思ってました。でも、みんな生きてた」
オレは殺さずに無力化する選択肢があるのに気付かずーーーいや、気付いていたのにその選択肢を捨てたんだ。翼たちの仇だから、未来まで殺そうとしてたから、オレは《隻腕のドラゴン》ーーー復讐者になった。でもオレがやったのは復讐じゃなくて、ただの殺人だった。本当に復讐だったにしても、どのみちオレはあの四人と変わらない殺人者なんだ。
「そしてこの一年間、彼らのことをきれいさっぱり忘れてました。いや、こうして話してる今もその内三人の顔も名前も思い出せない。つまりオ
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