新暦78年
memory:22 お風呂
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くる。
ハァ……と、面には出さずに心の中でため息を吐く。
なんせYesでもNoでも結局はYesになってしまうのだから。
YesはともかくとしてNoと答えた場合、イクスの雰囲気がしゅんとなって元気がなくなるのだ。
こういった仕草に弱いのか純粋なお願いに弱いのかわからないけど、最終的に負けてしまう。
もう一度心の中でため息を吐いて湯船から上がる。
イクスは何を勘違いしたのか予想通りしゅんとする。
「ほら、はやく椅子に座んな。髪洗ってほしんでしょ?」
「っ! はい!」
表情が一転してぱぁっと明るくなって目の前に座った。
その様子に苦笑しながらシャワーに手を伸ばした。
そこでふと気づいた。
「イクス、シャンプーハットはつけなくていいの?」
「……そこまで子ども扱いしないでください」
「だって、髪を人に洗ってもらうほど子供なんだからつい心配に」
「悠莉、意地悪です」
ちょっと意地悪く言ってみるとぷくぅ〜を頬を膨らませながら拗ねた。
拗ねているイクスに悪いとは思っていてもつい、その仕草が可愛いと思ってしまって頬を緩めてしまう。
「ごめんごめん。その代り優しく洗わせていただきますよ。そんじゃまずはお湯かけるから」
そしてシャンプーを使ってしゃかしゃかイクスの髪を後ろから洗う。
「〜〜〜♪」
と、イクスは気持ちよさそうに目を細めている。
「今回だけなんだからこれからはイクスが自分でやりなよ」
「……私毎回悠莉がいいです」
「却下」
「むぅ。ケチです」
「ケチで結構」
しゃかしゃかしゃかしゃか。
そんな会話をしながらもイクスの髪を洗う手を止めない。
「イクス、どこか痒いところある?」
「いいえ、大丈夫ですよ」
と、その時。
ふとイクスは何かを思い出したかのように、
「そうでした。私、不思議な本をシャマルの部屋で見つけたんです」
「シャマルの部屋から? 医学書とかじゃないの?」
私は手を止めて返事を待った。
「らいとのべる、でしたっけ。そのらいとのべるの表紙カバーがなかったので気になって手に取ったんです。それで中身を開いてみたら『ご主人様、お背中お流ししますぅ〜』と、少年執事がお風呂場に入ってくる挿絵が」
「……シャマル」
「それから他にも…屋敷の主が寝室に入ってしばらくすると、さっきとは別の少年執事が『旦那様、お情けを頂きに』」
「…………イクスそれ以上は言わなくていい。そういうものはイクスにはまだ早いから、というより必要ないから」
「は、はい」
無意識のうちに低い声が出ていたようで、それに気圧されたイクスは頷いた。
もう一度ため息を吐いてさっきのようなイクスの教育に
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