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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 26
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神父って、走れる生物なの!?)
 器用に枝葉を擦り抜け、木々の隙間を縫い、しなやかな体躯を持つ大型肉食獣を連想させる疾さで、傾斜を苦も無く駆け上がって行く。
 (……ん? 傾斜?)
 三人を遠く離れ、腕が自由を取り戻した頃、鼻と耳が流れる水の気配を感知した。
 そして
 「……!」
 黒闇に慣れた視界一面を、降り注ぐ白光が塗り替える。
 光と闇が物質を形作り、開けた眺望に満天の星と大森林を囲む山々の黒い峰を顕現させた。
 「……が……」
 「が?」
 ぽかんと辺りを見回したミートリッテは、呼吸の乱れも無く立ち止まった怪物(アーレスト)の腕の中で次第にぷるぷると震え出し……吼えた。

 「崖ぇえぇえええーッ!?」

 「え? あ。」
 空を穿つ大絶叫に驚いた神父の胸を突き飛ばして、植物が絶えた剥き出しの地面へ落下。
 「痛っ!」と呻きながらも数十歩先の崩れた先端に這い寄り、ガバッと身を乗り出した。


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