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もう一人の八神
新暦78年
memory:18 起こるは奇跡
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「え、えっと……」

ゆ、悠莉にまた撫でてほしいと思ってたなんて恥ずかしくて言えません!
なにか他の話題を……そうです!

「マリアージュの能力を消滅させることができると言ってましたがそれっていったい……」

「企業秘密ってことで。それをやれば次に目が覚めるころにはマリアージュとは無縁になってしまう一方で、イクスはただの女の子になっちゃうんだけどね」

「構いません。……もう、悲劇は、起こしたくありませんから……」

「ん、りょーかい」

「あ、あと……」

今更ながらとはいえ、どうしてこの事に気付かなかったのでしょう。

「どうして私が目覚めたにも関わらず、誰もこの部屋に来ないんでしょうか?」

「んーとね、聖王教会全体に認識障害の魔法やらなんやらを使ってこの部屋のことの情報を漏らさないようにしてるからね」

「どうしてそこまで……」

「私の力を知られないためだよ。この力を手にいれようとする私欲にまみれた醜い人間たちをこの眼で見てきたから……」

「それは……」

悠莉が言っていることはわかる気がします。
己の欲を満たすためなら他者を騙し欺き殺す者。
最悪、戦争を起こす者。

「そういうことだから他言無用だよ」

「わかりました」

「うん、これで暗い話は終わり!」

悠莉は真面目な表情を崩した。

「ふわぁ……」

「イクス? ……もしかして」

「はい…少し眠く、なってきました……」

ああ、もう少し悠莉とお話、したかったです。
そんな私の気持ちを読んだかのように頭を撫でてきた。

「大丈夫、今度目が覚めた時にスバルさんとヴィヴィオと一緒にたくさん話そうか」

「そう、ですね……」

やっぱり悠莉の手、温かいです。
あの時は悠莉ではなくスバルでしたが、こうやって撫でてもらいましたね。
瞼がゆっくりと重たくなっていく中、また会いましょうという意味を込めて、

「悠莉、おやすみなさい」

「うん、おやすみイクス」

悠莉の柔らかい表情に見守られながら再び眠りについた。

-side end-

-side 悠莉-

イクスが眠った後、音を出さないように息をはいた。

「つ、疲れた……」

さすがに複数同時の奇跡の行使は辛すぎる。

「イクスの治療に人避け…こりゃ本当に力のオンオフができるくらいにならないとヤバイかも。でもまあ……」

イクスに奇跡が起こったんだ、これはこれでよしだよね?

「魔法も解いたし、スバルさんが来るまでの少しの時間だけでも寝かせてもらってもいい、よね…? ………すぅ……」

-side end-
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