新暦78年
memory:18 起こるは奇跡
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「じゃあ、規模の方は……」
「様々だよ。なくしたものを見つける。甘いものをすっぱくする。海を割る。星を光らせる。……他愛もないことから実現不可能なこと。簡単に言えば、奇跡という一言で片付けられるものが私の能力の規模だね。もう一つ具体例を出すと……治療不可能なものを治す、とかもね」
「っ!? じゃあ私は……!」
「どうだろうね」
「え……?」
期待に満ちた声を上げて身を乗り出そうとしたけど、私の一言で固まった。
あー…期待させて絶望させたっぽいけど話は最後まで聞いてもらいますか。
「はっきり言うけどイクスヴェリアはまた眠りにつくことになるよ」
「で、でもっ! あなたは奇跡を起こせると!」
「完全には使いこなせないとも言ったよ」
イクスヴェリアは乗り出した身体を戻すと顔をうつむかせた。
はぁ…人の話を最後まで聞いてないのに勝手に絶望しないでほしいよ。
「はぁ…話は最後まで聞いて。誰も奇跡を起こせないだとかまたいつ目覚めるもわからないほどの永い眠りにつくとは言ってないでしょうに」
「……ぇ?」
今にも泣きそうだしそうに瞳に涙をためるイクスヴェリアはもう一度私を見上げる。
「眠るといっても数十日ぐらいで、それの周期は徐々になくなっていく。そしたらスバルさんやヴィヴィオたちとたくさん話したり遊んだりできるだろうさ」
イクスヴェリアは目を見開いて驚いていている。
「私がイクスヴェリアの手を握ったとき、イクスヴェリアとスバルさんの願いに反応して確実に奇跡は起きた。だけどその奇跡は瞬間的に完治させるほどの力はないんだけど、ゆっくりとイクスヴェリアの身体に奇跡を起こそうとしている。まあ、簡単に言えば今日のことは奇跡が起こる予兆っぽいものだったんだ」
「じ、じゃあ私は……」
「すぐにっていう訳にはいかないけど、スバルさんたちと一緒にいれるよ。マリアージュの生産能力は別の方法で消せるだろうし」
「うぅ……うれ、しいです。…またスバルやヴィヴィオとお話が…できるなんて……ぐずっ……」
イクスヴェリアの頭を抱きかかえてゆっくりと撫でる。
少し驚きながらもそれを受け入れて腕の中で涙を流した。
-side end-
-side イクスヴェリア-
「ごめんね、あんな遠まわしの言い方で」
「いえ、私も最後まで話を聞きませんでしたし、気にしないでください」
あれから私が泣き止むまで撫で続けてくれた悠莉と話していた。
こんなに泣くなんて思いもよりませんでした。
それにしても悠莉の手、その…暖かかったです……。
「イクス?」
「ひゃい!? な、なんですか?」
「なにか考え事してたみたいだったからさ」
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