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チェ・ヨンの想い
1部
1章
しまい込む想い 2 「チャン・ビンの想い」
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[1] 最後
 「医仙、 どうされました」
 チャン・ビンが、ウンスの顔を覗き込む。
 「なんとなく、この黄色い小菊の花が、気になって…」
ウンスは、典侍医の薬草園に腰掛け、咲き乱れている薬草を触りながら、黄色の小菊を何とはなしに見つめていた。
 医者としての腕は、この世のものと思えないほど。それだけではない。このお方の深く、それでいて一点の曇りもない澄み切った瞳。これまで、数々の国々を周り、多くの女人を見てきたが、このようなお方は、一人もいなかった。

 「この瞳。誰かに似ている」
ウンスの瞳が視界に入った時、そう思った。
「誰だろう」
女人にはない類の瞳。薬草が咲き乱れる庭を見回して、雲一つない空を仰ぎながら、ふと、一人の男の名前が浮かんだ。
 「チェ・ヨン………」

 「ふぅっ」
と一つ、ウンスに聞こえるか聞こえないかくらいのため息を、チャン・ビンは漏らした。

 「だめなのか」
 出会ってから、まだ何も始まっていないのに。何もして差し上げてないのに。
 俺は、この方を想ってはいけない身なのか。
 いや、そんなこと誰が決めた。俺は、俺のやり方で……。

 首を軽く左右に振りながら、
「ここにおられては、風邪を引かれます」
「おいしいお茶を、淹れましょう」
「そう……。王妃様から賜った、小菊の花を型取ったようなお菓子もあります」
そう言って、ウンスの肩に、ぽんっ、と手を置くと、チャン・ビンは部屋の中に入っていった。

 「あ〜生き返る……」
ウンスが久しぶりに明るい表情で、おいしそうにお茶をすする。
 茶菓子にも目をやり、
「これ、全部食べていいの?」
と子供のように目をまん丸にして、嬉しそうに問いかけてくる。
「このお方は、このような笑い方をされるのか……」

 これまで医術以外のことで、これほどまでに何かに目を奪われたことはなかった。
 心臓がきゅっとなり、息が苦しくなるこの気持ち。この訳の分からない想いは、一体なんなのか。自然と涙が出てくるような、この熱い感情。
 「どうしてしまったのか。俺は」
「もしかしたら、これが、人を想う、ということなのか……」
 このお方のこの笑顔。
「ずっと見ていたい」
「悲しませたくない」
  
 「この茶菓子、 すべて医仙のものですから。心ゆくまでお食べください」
 そう、チャン・ビンは言って、ウンスをその静かな眼差しでじっと見つめた。
 「本当にいいの〜?」
そう言いながら、無邪気に茶菓子を頬張るウンス。
 チャン・ビンは、再び、静かな微笑みと頷きで
「いいのですよ」
そう返事をすると、ウンスを一人残し、その部屋を静かに、そっと出て行った。
 扉を閉めて部屋を出ると、そこには今、チャン・ビンが最も見たくない顔。チェ・ヨンが柱に寄りか
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