第三十四話 あちこちでその一
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第三十四話 あちこちで
天理高校はおぢば、つまり天理市にあります。当然女子寮である東寮も天理市にあってそこから出ることは夏休みや冬休みでもないのですが。
休日に私服の上に半被を着て同じ寮生の娘と歩いているとです、おうどん屋さんの前で。
背の高い男の子がにこにことしてです、私の前に来て言ってきました。
「先輩何してるんですか?」
「それは私の言うことよ」
クリーム色のスラックスに黒いブラウスにベレー帽という格好の阿波野君に言い返しました。
「何でいるのよ」
「いや、遊んでるんですけれど」
「一人で?」
「詰所とか寄ったりしようと思って」
「休日になの」
「休日だからですよ」
「休日だから?」
「はい、ゆっくりとおぢばを見て回ってるんですよ」
私ににこにことして言ってきました。
「神殿も行きますし」
「参拝もするの」
「それで回廊拭きとか」
「ひのきしんもするの?」
「そのつもりですよ」
神殿では回廊ひのきしんというものがあります。布が置かれていてそれで神殿の廊下の床や手すりを拭いていくひのきしんです。
「ちゃんと膝当て持ってきてますし」
「本気なのね」
「勿論ですよ、最近休日とかおぢばに帰ってしてます」
「えっ、じゃあ今回だけじゃなくて」
「はい、入学してからよく」
「嘘じゃないわよね」
本気で、です。私は阿波野君に問い返しました。
「休日わざわざお家から帰って来てなの」
「そうしてます」
「ひのきしんに来てるって」
私はこのことが意外で仕方なくて阿波野君にまた問い返しました。
「阿波野君が」
「意外ですか?」
「あまりそうしたことしない子に見えるから」
「いやいや、教えてもらいまして」
「誰に?」
「教会長さんや詰所の人達に」
私と同じでした、このことは。
「ひのきしんの大事さを」
「そうなのね」
「はい、色々と教えてもらいまして」
それでというのです。
「いや、いいこと教えてもらいました」
「まあひのきしんはね」
天理教独特の教えです、あえて漢字も入れると日の寄進となるそうです。ボランティアと考えればいいでしょうか。
「大切なことだし」
「やるべきですよね」
「ただあえてお家から来てるのね」
「暇ですし」
「暇だからひのきしん?」
「部活もやってますけれど」
天理高校の部活は基本全員何処かの部活に入らないといけません、それかようぼくコースという天理教のことを学ぶコースに入るか講習を受けるかです。
「基本暇な部活なんで」
「だからなの」
「はい、こうして日曜とかはです」
「わざわざおぢばに帰って」
「家にいても暇ですからね」
何か妙に暇という言葉が出てきます。
「詰所に顔出したり
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