第二十一話 海と坂道の中でその一
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第二十一話 海と坂道の中で
グラバー邸のその中に入り岡島の案内を受けて観て回りつつだ、優花はガイドをしてくれる彼に考える顔で言った。
「志士の人達もグラバーさんも」
「両方がだね」
「その時代、人生を真剣に生きていて」
「その人達になりにね」
「そうしていたんですね」
「そうだね、それぞれの目的を見ながらね」
岡島は優花に答えた。
「そうしていたんだよ」
「そうですよね」
「人間生きているのなら」
「この世に生まれたのなら」
「それぞれの人生を必死に生きることが大事だよ」
「誰でもですね」
「そう、僕もそうで」
ここで優花に顔を向けて彼に言った。
「君もね」
「そうですよね」
「女の子になっても」
「それまでもこれからも」
「一生懸命生きるべきだよ」
「人生から逃げたらいけないですね」
「そうしても何もならないからね」
だからだというのだ。
「自分の人生はね」
「逃げないで、ですね」
「真剣に向かい合ってね」
そのうえでとだ、優花に話す。
「生きるしかないんだよ」
「人生とだけは」
「そう、ただ人生の中で逃げるべき時もあるから」
「危険を避ける時ですね」
「突っ込んで来る車から逃げないとはねられるよ」
この例えをだ、岡島は出した。
「そして怪我をするどころかね」
「死んじゃいますね」
「そうなるからね」
だからだというのだ。
「危険は逃げるしかない時もあるよ」
「そして逃げることを選ばないとですね」
「死ぬよ、そこで変に突っ張っても死ぬよ」
それだけだというのだ。
「死ぬより逃げた方がずっといいよ」
「命があってこそですか」
「何事もね、まずはね」
「何といってもですね」
「そう、命があってこそね」
何といってもというのだ。
「人生だからね」
「今の人生ですね」
「人は何度も生まれ変わってそれぞれの人生を生きるけれど」
輪廻転生、仏教等東洋の多くの宗教に見られる考えだ。岡島もまたこの考えを持っていてそのうえで優花に話す。
「その時の人生を必死に生きないといけないんだ」
「逃げないで」
「だから生きることはね」
「何といってもですね」
「第一のことだよ」
そうなるというのだ。
「死なないこと、つまりね」
「生きることですね」
「そうしないと駄目だよ、自分の人生からは逃げたらいけない」
「何があっても」
「そう、志士の人達やグラバーさんみたいにね」
「そして生きてですね」
「最後の時を迎えるべきなんだ」
その時の人生の、というのだ。
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