巻ノ五十四 昔の誼その六
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「残念ですが」
「北条とのは、ですか」
「来られませぬ、そして沼田をです」
「攻められるというのですか」
「その様に言われています」
「それはなりません」
すぐにだ、家康はこう言った。
「断じて」
「左様ですな」
「今からでも遅くはありません」
家康は氏規に言った。
「北条殿を説得して」
「そうしましたが」
「聞く耳を持たれていませぬか」
「どうしても、そして」
「沼田にもですか」
「攻め入るおつもりです」
「そこまでしますと」
それこそとだ、家康はさらに言った。
「取り返しがつかぬことになります」
「まさにそうですな」
「お止めになることです」
釘も刺した、言葉で。
「断じて」
「それがしもそう思いますが」
「どうしてもですか」
「はい」
無念の声でだ、氏規は家康に言った。
「大殿は」
「そうなのですか」
「これでは」
「はい、残念ですが」
家康も言うのだった。
「これではです」
「戦になりますな」
「それでは関白様は納得されません」
家康ははっきりと言った。
「あの方は」
「やはりそうですか」
「あの方は天下統一を目指されています」
「東国も含めた」
「無論です」
言うまでもないという口調の返事だった。
「それは」
「そうですか」
「はい、ですから」
「北条家も従わねばですな」
「納得されません」
絶対にという口調での返事だった。
「あの方は」
「やはりそうですか」
「何でしたらです」
家康は決意している顔でだ、氏規に述べた。
「拙者が小田原に行きますが」
「そしてですか」
「北条殿とお話します」
是非にという口調での言葉だった。
「そうします」
「そうされるのですか」
「はい、そうです」
こう言うのだった。
「そして何としても」
「ここはですか」
「戦を避けるべきです」
何としてもという口調でだ、家康は氏規に言うのだった。
「必ず」
「そうですか、しかし」
「それでもですか」
「竹千代殿が行かれましても」
難しい顔でだ、氏規は家康に答えた。
「そうされてもです」
「聞かれませんか」
「あの方は」
「では」
「これでは滅びますな」
氏規はあえてだ、家康にこの言葉を出した。
「必ず」
「拙者もそう思いまする」
「何とかしたいですが」
「しかしこのままでは」
「戦は避けられないですね」
「そうなります」
間違いなく、というのだ。
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